ビニシオ・セレソ

マルコ・ビニシオ・セレソ・アレバロ：グアテマラの民主化に貢献した政治家

マルコ・ビニシオ・セレソ・アレバロ（1942年12月26日 - ）は、グアテマラの政治家であり、1986年から1991年まで同国の大統領を務めました。彼は、グアテマラの長く続いた軍事政権時代に終止符を打ち、民主化への道を切り開いた人物として知られています。

生い立ちと初期の政治活動

セレソはグアテマラシティで生まれ、1968年にサンカルロス大学で法学の学位を取得しました。学生時代から政治活動に積極的に参加し、キリスト教民主党(DCG)の政治家として活動しました。1974年にはグアテマラ議会の議席を獲得し、政界での地位を確立しました。1978年にはグアテマラシティの市長選に出馬しましたが、惜しくも落選しました。

セレソは、軍事政権に対する批判の急先鋒として立ち、1980年代には数回にわたって暗殺の危機にさらされました。しかし、彼はその信念を曲げることなく、民主化運動を推進しました。

大統領としての業績と課題

1985年11月の大統領選挙で、セレソはキリスト教民主党の候補として出馬し、右派のホルヘ・カルピオ・ニコジェを破って当選しました。1986年1月14日に大統領に就任し、1966年のフリオ・セサル・メンデス・モンテネグロ以来、20年ぶりに軍人ではない大統領が誕生しました。

大統領就任後、セレソはグアテマラの民主化を推進するために様々な政策を実施しました。軍部がゲリラ対策と国防の主導権を握る状況は変わらなかったものの、市民が政治参加できる機会は増大しました。また、コスタリカのオスカル・アリアス・サンチェス大統領の提案による中央アメリカ5か国の和平協定案に賛同し、グアテマラのエスキプラスで最初の会合が開かれたことから、エスキプラスI（1986年）およびエスキプラスII（1987年）の合意が実現しました。ニカラグアのサンディニスタ革命をアメリカ合衆国が打倒しようとすることに対して、セレソは協力を拒否しました。

セレソは、グアテマラ国民革命連合(URNG)ゲリラとの対話による交渉を開始しました。それまで政府はゲリラ側の武装解除を対話の前提条件としていたため、実際の対話が行われることはありませんでした。1987年10月にはマドリードで会合を開き、大きな進展はなかったものの、国民和解委員会(CRN)の設立が合意されました。1990年4月にはオスロで会合を開き、その合意にもとづいて財界・宗教など分野ごとの会合が積み重ねられました。しかし、セレソの任期中にも軍部による暴力は続き、1990年12月にはサンティアゴ・アティトランで駐留軍による虐殺事件が起きて国際的な非難を浴びました。この結果、アメリカ合衆国は軍事援助を停止しました。

セレソ政権はインフレに悩まされ、1990年には国際市場での農作物の価格が低下し、経済的に困窮しました。社会・経済改革は反対が強く、充分に実行することができませんでした。また、セレソの任期中にはクーデターが何度も試みられました。1988年5月11日には2つの軍事基地から反乱軍が首都に侵入しようとし、1989年5月9日には1年前と同じメンバーを含む約300人の反乱軍が行動を起こしましたが、いずれも鎮圧されています。

大統領退任後

1990年11月の選挙には、軍政時代の元大統領エフライン・リオス・モント将軍が出馬しようとしましたが、クーデターで国家の首長になった者が大統領に就任することは憲法によって禁止されているため、候補として認められませんでした。選挙ではホルヘ・セラノ・エリアスが勝利し、次期大統領に就任しました。

その後もセレソは中米和平のために努力し、「中米の大使」として知られるようになりました。2017年6月には中米統合機構の事務局長に就任し、地域統合に貢献しています。

マルコ・ビニシオ・セレソ・アレバロは、グアテマラの民主化に大きく貢献した政治家として、その名が歴史に刻まれています。

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