オスカー型原子力潜水艦

オスカー型原子力潜水艦（Oscar class submarine）は、ソビエト連邦海軍とロシア海軍が運用していた巡航ミサイル潜水艦であり、その艦級にはNATOコードネームが付与されています。この艦は、潜水巡洋艦として分類され、特に高い性能を持った艦艇です。オスカー型はオスカーIとオスカーIIの2つの主要な型があります。

概要

オスカー型潜水艦は、その設計名に基づき原型の949型と改良型の949A型があります。949型は「グラニート」という計画名で、949A型は「アンテーイ」の名で知られています。これは第3世代の巡航ミサイル原潜（SSGN）であり、P-700「グラニート」（SS-N-19「シップレック」）対艦ミサイルを24発搭載する能力を持つため、非常に強力な対水上打撃力を誇ります。

この艦型は、艦艇としては異例なほどの大型であり、後継の885型（ヤーセン型）は比較的小型化され、攻撃原潜（SSN）としての役割も持たせられています。オスカー型は対水上打撃専任のSSGNとしては最後の艦となっています。

来歴

1960年代初頭、ソ連海軍は675型潜水艦を運用開始しましたが、その対艦ミサイルは水中発射に適していなかったため、作戦行動に制約がありました。これを背景に、670型潜水艦では水中発射に対応した新しいミサイルが搭載されたものの、射程は依然として不足していました。そこで、長射程ミサイルの開発が求められ、結果的にP-700「グラニート」が開発され、949型の設計に繋がりました。この過程で、多額の予算が投じられ、艦艇の設計も拡大されました。

最初の949型は1970年代末に設計が進められ、1980年代に入ってから初めての艦が就役しました。オスカー型はその設計上、長期間の作戦行動を想定しており、居住性の向上や運動・娯楽のための施設も整備されています。

設計

オスカー型原子力潜水艦は、排水量が15,000トン以上であるため、サイズが非常に大きくなっています。これにより、P-700対艦ミサイルを24発搭載する能力を確保しています。艦体は複殻式構造が採用されており、耐圧性が向上しています。また、艦内は9つの区画に分かれ、乗員の居住性も改善されています。

ミサイル発射筒は、670型や670M型と同様の配置で設置されています。艦の動力は、2基の大出力のOK-650M加圧水型原子炉を搭載しており、2軸推進方式を採用しています。電源供給のために、ターボ発電機と銀亜鉛電池が搭載され、静粛性を高めるための工夫もされています。

装備

オスカー型には強力なソナーシステムが搭載されており、MGK-540「スカト3」が用いられています。この技術により、長距離からの敵艦発見能力が大幅に向上しました。主兵装として搭載されているP-700「グラニート」は、対艦能力において非常に評価され、米海軍の空母に対する有効打となっています。海軍総司令官は、1隻の空母を撃破するには36発のミサイルが必要であり、本艦はその約1.5隻分に相当すると述べています。

配備と運用

オスカー型の最初の艦は1980年に就役し、合計で2隻が建造されたオスカーI型の後、1986年からはオスカーII型が11隻建造されました。艦隊としての運用は冷戦時代から続き、2000年代にはいくつかの艦が退役しましたが、特にオスカーII型は対地攻撃能力の再評価により、活動の幅が広がりました。しかしながら、財政難による制約もあり、いくつかの艦は退役に追い込まれていきました。

クルスク沈没事故

特に有名な事故として、2000年8月に発生したクルスクの沈没があります。演習中に発生した爆発により、艦は沈没し、乗員111名が全員死亡しました。この事故は、潜水艦の運用に対する広範な見直しを促すきっかけとなり、オスカー型全体が一時的に出航禁止となりました。クルスクの事故を通して、艦艇の設計や運用の改善が求められるようになり、安全性向上が強調されるようになりました。

同型艦とその現状

オスカー型原子力潜水艦は949型（オスカーI型）と949A型（オスカーII型）に分類され、それぞれ複数の艦が存在しました。949型はすでに除籍されており、949A型は現在も一部の艦が運用されています。また、949A型は今後も新たな改造や建造計画が進められています。特にK-329ベルゴロドは、特殊用途原子力潜水艦に改造され、2019年には進水済みです。

オスカー型原子力潜水艦は、その設計と運用の面において、20世紀の冷戦時代の象徴的な存在として、現在も話題の中心となっています。その高い攻撃力と特異な艦型は、新たな技術革新とともに、海軍戦略における重要な要素であり続けています。

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