オスマン帝国憲法

オスマン帝国憲法

オスマン帝国憲法（Kanun-ı Esasî）は、1876年に制定され、オスマン帝国で初めての成文法としての地位を確立しました。この憲法は、特にオスマン帝国が直面していた国内外の緊張の中で発表され、当時の皇帝アブデュルハミト2世の政治的意図を受けたものでした。憲法成立の背景には、ボスニア蜂起やブルガリアの蜂起といった反乱の広がりや、これに対するロシア帝国の介入の懸念がありました。

歴史的背景と制定の過程

1876年、オスマン帝国はさまざまな内外の脅威にさらされていました。そのため、政府は近代化と改革の必要性を感じ、国際社会からの支持を得るために立憲制を導入する決断を下しました。この決定は、立憲派の指導者ミドハト・パシャが中心となり進められました。制憲委員会は約二ヶ月の議論の後、憲法を発表するに至りました。

憲法の発表は、オスマン帝国の国民にとって大きな期待を抱かせるものでした。文書は119条から成り、スルタンとカリフ制の明文化、ムスリムと非ムスリムの平等、オスマン語の公用語化、議会の設置、裁判所の並立といった内容が盛り込まれていました。特に第113条では、皇帝が戒厳令を発動できる権限も与えられており、皇帝の権力を一定程度保証する構造になっていました。

憲法の内容

憲法の特色としては、以下のような重要なポイントがあります。

1. スルタン＝カリフ制の明文化（第4条）
この条項により、オスマン帝国の指導者としてのスルタンの地位が強調されました。

2. ムスリムと非ムスリムの平等（第8条）
ここで指定された平等により、多様な宗教を持つ国民に対する一定の権利保護がなされました。

3. 公用語の指定（第18条）
オスマン語、すなわちトルコ語が公式に使用されることが定められました。

4. 議会の開設（第42条）
上下両院からなる議会が設立され、国政に国民の意見を反映させる道が開かれました。

5. 裁判所の種類（第87条）
西洋式の法律に基づく裁判所とシャリーアに基づく裁判所が並置され、それぞれの法体系の下での裁判が可能となりました。

憲法停止とその後

しかし、憲法は発表から2年でアブデュルハミト2世によって停止されてしまいました。露土戦争の結果、情勢が不利であることを理由に、議会は閉鎖され、憲法も有名無実化しました。ミドハト・パシャは議会召集の前に国外追放され、実質的に憲法の理念は存在しないものとなりました。この時期は「第一次立憲制」と称され、国民にとっての重要な政治的機会が失われました。

その後、アブデュルハミト2世の専制支配は続き、憲法が追放された状態の中で、知識層を中心に憲政の復活を求める動きが強まっていきます。1908年、彼らの努力が実を結び、青年トルコ人革命を経て憲政が復活しました。この過程で、オスマン帝国憲法が再び重要な役割を果たすことになりました。

結論

オスマン帝国憲法は、単なる法典以上に歴史的意義を持ち、オスマン帝国の近代化への第一歩であり、またその後の国民主義と立憲政治の基盤ともなりました。しかし、短期間で停止を余儀なくされたことは、従来の専制政治への回帰を象徴しており、その後の帝国の運命に深い影響を及ぼしました。

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