オズワルド・ヴェブレン

アメリカ合衆国の数学者、オズワルド・ヴェブレン（Oswald Veblen）は、1880年6月24日にアイオワ州ディコーラで生を受け、1960年8月10日にその生涯を終えました。著名な経済学者ソースティン・ヴェブレンを叔父に持つ彼は、20世紀前半のアメリカ数学界において中心的な役割を果たしました。

ヴェブレンの学術的な道は、アイオワ大学での学びから始まり、1898年に学士号を取得しました。さらに、1900年にはハーバード大学でも学士号を取得し、その後シカゴ大学の大学院に進みました。ここで彼は、当時の著名な数学者イライアキム・ムーアの指導のもと研究を進め、1903年に博士号を取得しました。

博士号取得後、ヴェブレンは1905年から1932年までの長きにわたり、プリンストン大学数学部で教鞭をとりました。この期間に、彼はジェームズ・アレキサンダー、アロンゾ・チャーチ、J・H・C・ホワイトヘッドなど、後に数学界で重要な業績を残す多くの弟子を指導し、優れた教育者としての評価を確立しました。1910年には教授へと昇進しています。

学問研究と教育に加え、ヴェブレンは社会的な貢献も果たしています。第一次世界大戦中には軍務に就き、少佐として弾道計算に携わりました。戦間期には、1923年から1924年にかけてアメリカ数学会の会長を務め、数学研究への資金援助を増やすために奔走しました。また、1929年に計画されたプリンストン大学数学部の新棟「ファイン・ホール」の設計においては、数学者たちが互いに交流し、新たなアイデアを生み出す場となるような空間設計の重要性を提唱し、その意見が大きく反映されました。

1932年には、設立されたばかりのプリンストン高等研究所に参加し、その初期の教授陣の一人となりました。この研究所は、世界中から最高の研究者を集め、純粋な学術研究に専念できる環境を提供することを目指しており、ヴェブレンはその理念の実現に貢献しました。第二次世界大戦中には、初期の電子計算機であるENIACの開発プロジェクトにも関わるなど、応用分野への関心も示しています。

数学におけるヴェブレンの業績は多岐にわたります。特に、射影幾何学、トポロジー（位相幾何学）、そして微分幾何学の分野で重要な貢献を残しました。微分幾何学に関する彼の研究は、アルベルト・アインシュタインの相対性理論の研究にも影響を与えたとされています。初期の業績としては、1905年のジョルダン曲線定理の証明がよく知られています。また、1933年に弟子のJ・H・C・ホワイトヘッドと共同で執筆した『微分幾何学の基礎』（Foundations of Differential Geometry）は、微分可能多様体という現代微分幾何学の根幹をなす概念を厳密に定義した最初の著作として、数学史に名を刻んでいます。

ヴェブレンの長年にわたる数学研究と教育、そして数学界への貢献を称え、彼の死の翌年である1961年には、アメリカ数学会によって「オズワルド・ヴェブレン幾何学賞」が創設されました。この賞は、幾何学およびトポロジーの分野における優れた業績に対して贈られており、現在もヴェブレンの遺産を記念しています。彼の研究は現代数学の様々な分野に影響を与え続けています。

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