オセロマルチビジョン

オセロマルチビジョン：セガとの協業で生まれた家庭用ゲーム機

1983年末、ツクダオリジナルは家庭用ゲーム機「オセロマルチビジョン」を発売しました。このゲーム機は、セガ・エンタープライゼスとの画期的な業務提携によって誕生しました。セガの家庭用ゲーム機SG-1000およびパーソナルコンピュータSC-3000と互換性を持つ点が大きな特徴です。さらに、本体にはオセロゲームが内蔵されており、すぐにオセロを楽しむことができました。

開発背景：MSX規格への対抗とセガとの連携

オセロマルチビジョンの開発は、アスキーが提唱したパーソナルコンピュータの統一規格「MSX」への対抗策として始まりました。ツクダオリジナルとセガは、この競争激化する市場において、互いの強みを活かすため業務提携を結びました。開発は両社が共同で行い、ツクダオリジナルが主要部品をセガから供給を受けて生産と販売を担当しました。1983年10月4日には、両社の幹部が出席する記者会見でオセロマルチビジョンの発表が行われ、年末の発売に向けて大きな期待が寄せられました。当時の価格は19,800円、販売目標は約2万台でした。

本体機能：Z80 CPUと充実の入出力

オセロマルチビジョンは、3.58MHzのZ80 CPU、16KB ROM、2KB RAMを搭載していました。オセロゲーム専用のキーボード（A～H、1～8のキーで打石位置を指定）と、別売りのジョイスティック（1P用）を備えていました。

内蔵オセロゲーム：高いAIと多彩な機能

オセロマルチビジョン最大の特徴は、本体のみでオセロゲームが楽しめる点です。この内蔵オセロゲームは、ツクダオリジナルが1980年に発売した携帯型ゲーム機「コンピューターオセロ」をベースに、1年以上かけて開発されました。世界オセロチャンピオンである井上博氏の協力により、高いレベルのAIが実装され、コンピュータの強さは2段相当（レベル8設定時）と謳われていました。

レベルは1～8まで調整可能で、ヒント機能、1手戻し機能、棋譜再現機能なども搭載されていました。レベル8で38石以上を獲得して勝利すると、シークレットコードが表示され、応募すると記念品がもらえるキャンペーンも行われました。また、『月刊アスキー』誌上で開催された「アスキーマイクロオセロリーグ」にも参加し、他プログラムの実力測定の指標として用いられたという興味深い歴史もあります。

セガハードとの互換性：業界初の統一規格

オセロマルチビジョンは、セガのSC-3000/SG-1000用ゲームソフトとの互換性を持ちました。オセロマルチビジョン用ソフトをSC-3000/SG-1000で、またその逆も可能でした。この互換性により、当時としては画期的な統一規格を実現し、『日経産業新聞』や『週刊現代』などでも大きく取り上げられました。

オセロマルチビジョンFG-2000：機能強化と価格改定

1984年7月には、改良版「オセロマルチビジョンFG-2000」が発売されました。当初は内蔵オセロゲームを省いた廉価版「マルチビジョンII」の発売が予定されていましたが、最終的に内蔵オセロゲームは残されました。価格も19,800円と据え置きでした。

FG-2000は、ジョイスティックがジョイパッドになり、セガのSG-1000用外付けキーボード「SK-1100」に対応することでBASICソフトも動作するようになりました。2P用のジョイスティック端子が追加され、1P用ジョイスティックも標準で付属するようになりました。1985年には、価格は18,500円に改定されました。また、プロゴルファー岡本綾子の優勝を記念したキャンペーンも実施されました。

ソフトウェア：ツクダオリジナルとセガの両社から発売

オセロマルチビジョンは、セガのSC-3000/SG-1000用ソフトカートリッジと互換性がありましたが、ツクダオリジナルも独自にゲームカートリッジを発売しました。1983年から1984年にかけて、8タイトルがリリースされました。これらのタイトルには、『Qバート』『ガズラー』『スペースマウンテン』など、人気タイトルが含まれていました。一方で、『グレートエスケープ2』など、発売されなかったタイトルも存在します。

オセロマルチビジョンは、セガとの業務提携という異色の取り組み、高い互換性、そして魅力的な内蔵オセロゲームにより、当時のゲーム市場に大きなインパクトを与えた家庭用ゲーム機と言えるでしょう。

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