オゼッラ・FA1D

オゼッラ・FA1D：F1における短い生涯

オゼッラ・スクアドラ・コルセが1982年から1983年にかけてF1世界選手権に投入したオゼッラ・FA1Dは、成功とは無縁の短いF1キャリアを送ったマシンです。前モデルであるFA1Cをベースに開発され、13戦に出走したものの、完走を果たすことはありませんでした。

開発：進化と妥協

FA1Dは、FA1Cの改良版として開発されました。設計はジョルジオ・ヴァレンティーニが手がけた3台のFA1Cを基礎に、ハーベ・ギルピンが1982年シーズン中に改良を加えました。しかし、ギルピンが1983年にリジェに移籍したため、残されたシャシーの開発はトニー・サウスゲートが引き継ぎました。彼は、新たに導入されたフラットボトム規定に対応するための設計変更を行いました。

エンジンは、コスワースDFVを搭載。これは、翌年からアルファロメオ製エンジンへの移行を予定していたため、FA1Dがオゼッラ最後のコスワースエンジン搭載車となりました。

FA1Dには、空気力学的な設計が異なる2つのバージョンが存在します。1982年型のFA1Dは、特徴的な翼型のサイドポンツーンを持つウィングカーでした。サイドポッドはコックピットからリアタイヤまで伸びる長い形状が特徴です。資料によっては、この1982年後半に投入された車両をFA1Cと分類している場合もあります。

1983年シーズンには、フラットボトム規定への対応のため、サイドポンツーンが大幅に縮小されました。ラジエターは小型化され、後輪前部の三角形の拡張部に収められました。また、他のチームと同様に大型のリアウィングが装着されましたが、これはフラットボトム化によるダウンフォースの減少を補うためでした。しかし、この大型リアウィングは空気抵抗の増加と最高速度の低下をもたらし、特に自然吸気エンジンを搭載するオゼッラにとって、ターボエンジン勢との競争力をさらに低下させる結果となりました。

FA1Dは当初1台のみが製造され、1983年シーズン開始までにさらに2台が追加製造されました。

レース戦績：完走への遠い道

1982年、FA1Dはドイツグランプリでデビュー。ジャン＝ピエール・ジャリエがドライブし、5戦に出走しましたが、いずれも完走には至りませんでした。オーストリアでは予選落ち、ラスベガスでは予選中のクラッシュにより決勝進出を逃し、その他のレースでは機械トラブルによるリタイアが続きました。

1983年シーズンは、ピエルカルロ・ギンザーニとコラード・ファビの2名体制で臨みました。ギンザーニは序盤3戦をFA1Dで走りましたが、いずれも予選落ち。第4戦サンマリノからは新型のアルファロメオ製エンジンを搭載したFA1Eにスイッチしました。ファビは第8戦カナダまでFA1Dをドライブし、8戦中5回予選通過を果たしたものの、これも完走には至らず、全てリタイアという結果に終わりました。

オゼッラFA1Dは、開発の努力にもかかわらず、F1で成功を収めることができませんでした。技術的な挑戦と時代の流れの中で、その短いF1での歴史は、惜しまれつつも幕を閉じました。 開発陣の努力と、ドライバーたちの奮闘は、F1の歴史の中に小さな脚注として刻まれています。

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