オットー・ネルツ

オットー・ネルツ：ドイツサッカーの先駆者、光と影

オットー・ネルツ（1892年10月21日 - 1949年4月19日）は、ドイツサッカー史において特別な位置を占める人物です。彼はドイツ代表の初代監督であり、同国サッカーの発展に大きく貢献しました。しかし、彼のキャリアはナチス党との関わりによって複雑な影を落としています。

アマチュアから代表監督へ

ネルツは、VfRマンハイムやテニス・ボルシア・ベルリンでアマチュア選手としてプレーしました。当時のドイツでは、サッカーはまだ発展途上にあり、中欧の強豪国（オーストリア、ハンガリー、チェコスロバキア、イタリア）との間には大きな実力差がありました。ネルツは選手としての限界を感じ、指導者の道へ進むことを決意します。

1923年、ネルツはドイツ代表監督に就任します。彼は、ジミー・ホーガン、フーゴ・マイスル、ヴィットリオ・ポッツォといった当時の名将たちの指導法を熱心に研究し、時には直接アドバイスを求めました。彼は、海外の先進的なサッカー理論を積極的に取り入れ、ドイツサッカーのレベル向上に尽力しました。

ワールドカップでの躍進と国内人気の高まり

ドイツは1930年のFIFAワールドカップ・ウルグアイ大会への参加を見送りましたが、1934年のFIFAワールドカップ・イタリア大会で初めてワールドカップに出場を果たします。ネルツの指導の下、ドイツ代表はヨーロッパでもトップクラスの実力を身につけ、3位決定戦では強豪オーストリアを破り、見事3位入賞を果たしました。この成功により、ドイツ国内におけるサッカー人気は急速に高まりました。

ナチス党との関わりと解任

1933年、ネルツはナチス党に入党します。これにより、1936年に地元で開催されたベルリンオリンピックに向けて、あらゆる強化支援を受けることが可能になりました。しかし、本大会では準々決勝でノルウェーに0-2で敗れ、その責任を問われ、大会終了後に監督を解任されてしまいます。後任には、彼の下でアシスタントコーチを務めていたゼップ・ヘルベルガーが就任しました。その後、ネルツはベルリンサッカー協会の監督およびコーチを務めました。

戦争と悲劇的な最期

1945年、第二次世界大戦のベルリン攻防戦後、ネルツはナチス党へ協力した罪に問われ、連合軍の捕虜となります。そして4年後の1949年4月18日、収容所内で亡くなり、遺体は収容所内の集団墓地に埋葬されました。

オットー・ネルツは、ドイツサッカーの黎明期を支え、初のワールドカップ3位入賞という偉業を成し遂げた功績を持つ一方で、ナチス党との関わりによって、その評価は複雑なものとなっています。彼の生涯は、激動の時代におけるスポーツと政治の関係を考えさせられる、一つの教訓として語り継がれるでしょう。

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