オデオン座

オデオン座：激動のフランス歴史を刻んだ国立劇場

パリ6区、セーヌ川左岸に位置するオデオン座（Théâtre de l'Odéon）は、新古典主義様式の美しい国立劇場です。リュクサンブール庭園に隣接し、約1000席を擁するその歴史は、フランス革命以前まで遡ります。

1779年の着工、1782年の開場と、王室の庇護のもと、当初はコメディ・フランセーズの劇場として「フランス座（Théâtre Français）」の名で誕生しました。ルイ16世の王妃マリー・アントワネットも出席した盛大な開場式は、劇場の輝かしい未来を予感させるものでした。しかし、その後のフランス革命は、オデオン座の運命を大きく変えます。

革命期には「国民劇場（Théâtre de la nation）」と改名され、その後も「平等劇場 マラー支部（Théâtre de l'Égalité section Marat）」など、時代の変遷とともに幾度となく名称を変え、閉鎖と再開を繰り返しました。革命の混乱の中で、劇団のメンバーが離散し、火災に見舞われるなど、劇場は幾多の困難を経験しています。1796年には現在の名称である「オデオン座」を名乗るようになりましたが、政治情勢の変動は、劇場の運営に常に影を落としていました。

ナポレオン1世時代には皇后劇場（Théâtre de l'Impératrice）と改称され、皇帝の資金によって再建されるなど、権力者の庇護を受ける時期もありました。しかし、その後も1818年には再び火災に見舞われ、再建を余儀なくされました。1830年の7月革命では革命派の拠点となり、革命後の混乱の中で公的補助が打ち切られるなど、運営は不安定な状態が続きました。

19世紀半ばには破産により一時閉鎖される事態も発生しますが、ナポレオン3世時代には、サラ・ベルナールといった著名な女優が公演を行い、再び脚光を浴びる時期もありました。普仏戦争時には負傷者の収容所として使用されるなど、その歴史は、常にフランスの歴史と深く関わっていることが分かります。

20世紀に入ると、オデオン座は再びコメディ・フランセーズの第二劇場となり、第二次世界大戦中にはドイツ軍の占領下に置かれるなど、激動の時代を経験します。戦後、1959年にはコメディ・フランセーズから独立し、「フランス劇場（Théâtre de France）」として、ジャン＝ルイ・バローとマドレーヌ・ルノーらによる革新的な演劇が上演されるようになりました。しかし、五月革命での出来事により、バローは解任され、オデオン座は再びコメディ・フランセーズの管轄下に置かれました。

1980年代以降は、「ヨーロッパ劇場」としての側面を強め、様々な国の劇団が公演を行う国際的な舞台となりました。現在では、コメディ・フランセーズとは独立した国立劇場として、演劇図書館も併設し、フランス演劇界の中核的な存在として、その活動を続けています。オデオン座の歴史は、単なる劇場の歴史にとどまらず、フランスの歴史、そして演劇史そのものを映し出す鏡と言えるでしょう。その美しい建物と豊かな歴史は、多くの観客を魅了し続けています。

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