オデッサ・ファイル

オデッサ・ファイル

『オデッサ・ファイル』（The Odessa File）は、イギリスの作家フレデリック・フォーサイスによって書かれたサスペンス・スリラー小説です。本作では、若きドイツ人記者と元ナチスによる秘密組織「オデッサ」との緊迫した対立が描かれています。この作品は、フォーサイスのデビュー作『ジャッカルの日』と並ぶ彼の代表作として広く知られています。

概要

物語は、1964年に偶然手に入れた日記から始まります。著者が関わる「オデッサ」は、ナチスの旧関係者が連合国の追及から逃れるために設立した秘密組織であり、彼らは南米への逃亡を支援したり、新生ドイツ社会に浸透を図ったりしていました。タイトルの由来は、1964年に西ドイツの司法省に匿名の手紙として届けられた文書にあります。この文書には、「オデッサ」の支援を受けて逃げた元SS隊員の詳細が含まれていました。

ストーリーの展開

主人公のペーター・ミラーは、西ドイツでルポライターとして活動している青年です。彼は、ケネディ大統領暗殺事件と同時期に自殺した老ユダヤ人の遺した日記を発見し、そこから彼が過去にオストラントの強制収容所から解放されたこと、そしてその収容所の所長エドゥアルト・ロシュマンがいまだに西ドイツで暮らしていることに気づきます。ロシュマンは、ペーターの父親を殺した人物であり、その関係が物語をさらに複雑にします。

ペーターは、過去の出来事と向き合う決意を固め、ロシュマンの所在を探ることになります。愛車のジャガーを駆り、彼は調査に乗り出すものの、周囲の人々はナチスの過去を避けようとし、「オデッサ」の存在は謎に包まれています。彼に対する妨害行為が続く中、ペーターは「ナチ・ハンター」であるサイモン・ヴィーゼンタールと接触し、名かと思えない情報を得ます。

オデッサとの接触

ペーターは、元強制収容所の所長を捕らえるために、ユダヤ人の過激派グループと手を組む決意をします。彼は、「元SS曹長ロルフ・コルプ」と名乗り、組織内に潜入します。この潜入作戦の背景には、オデッサがイスラエルの壊滅を目論んでいるという情報が存在しました。

組織内の「狼男」との接触や、様々な危険を通じてペーターはオデッサの暗い実態を暴いていく一方で、緊張感あふれる追跡劇が繰り広げられます。愛車が爆破され、命の危機に直面しながらも、彼はオデッサの秘密ファイルを司法省に届けるために立ち上がります。

結末と影響

最終的には、ペーターが持ち帰った老ユダヤ人の日記は、ベンシャウル少佐によってその遺言通りに慰霊されることになります。イスラエルの存続を支える一方、オデッサ組織も大きな打撃を受け、物語は衝撃的な結末を迎えます。

逸話

実際の歴史に基づいている部分が多く、登場人物の一人であるエドゥアルト・ロシュマンは、実在した強制収容所長で「リガの屠殺人」と呼ばれていました。このように著者のフォーサイスは、ナチスに関わる詳細な情報を元に作品を構築したとされています。

映画化

この作品は1974年に映画としても制作され、ロナルド・ニーム監督が手掛け、ジョン・ヴォイトが主演を務めました。

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