オドアルド・ベッカーリ

オドアルド・ベッカーリ

オドアルド・ベッカーリ（Odoardo Beccari、1843年11月16日生まれ、1920年10月25日没）は、19世紀から20世紀にかけて活躍したイタリアの著名な植物学者です。彼は特に東南アジア諸島やニューギニアなど、世界各地の植物相を探求し、数多くの未知の植物を発見した功績で知られています。

フィレンツェに生まれたベッカーリは、学術的な道を志し、ピサ大学およびボローニャ大学で植物学を学びました。大学課程を修了した後、彼はイギリスの有名な王立植物園、キュー・ガーデンで短期間過ごし、そこで後にボルネオ島北部にサラワク王国を建国したイギリス人冒険家、ジェームズ・ブルックと出会います。この出会いがベッカーリの探検家としてのキャリアに大きな影響を与えました。

ブルック公の支援を得て、ベッカーリは1865年から約3年間にわたり、サラワクやブルネイといった東南アジアの島々で精力的に植物調査を行いました。この探検を通じて、彼は膨大な数の植物標本を収集し、多くの新種を発見しました。彼の研究は、当時のヨーロッパにおける熱帯植物への理解を深める上で重要な貢献となりました。

東南アジアでの探検後、ベッカーリはエチオピアでの採集活動にも参加しました。さらに1872年には、著名な鳥類学者であるルイージ・ダルベルティスと共に再び南半球へ渡り、ニューギニアの探検調査を行いました。この遠征では、植物だけでなく、美しい極楽鳥の標本や、現地の民族文化に関する貴重な資料も収集しています。

学術活動にも熱心だったベッカーリは、1869年に植物学専門誌『Nuovo Giornale Botanico Italiano』（新イタリア植物学誌）を創刊し、イタリアにおける植物学研究の発展に寄与しました。自身の研究成果は、イタリア地理学会の紀要などでも精力的に発表しています。

彼の最もよく知られた発見の一つは、1878年にスマトラ島でなされました。そこで彼は、世界最大級の花としてしばしば挙げられる、スマトラオオコンニャクを発見しました。この植物は、開花時に強烈な腐敗臭を放つことから「死体花」とも呼ばれ、その特異な生態で人々を驚かせました。

1878年、ベッカーリはイタリアに帰国し、フィレンツェに戻りました。フィリッポ・パーラトーレの後任としてフィレンツェ植物園の園長職に就任しましたが、翌年にはその職を辞しています。

オドアルド・ベッカーリが生涯をかけて収集した植物標本は、現在、フィレンツェ自然史博物館の貴重な資料の一部として収蔵され、研究者に利用されています。また、インドネシアのパプアニューギニア大学が発行する植物学雑誌は、彼の功績を称え『Beccariana』と名付けられています。

主な著書

ベッカーリは自身の探検や研究の成果を多くの著作として発表しました。

• - Malesia, raccolta d'osservazioni lese e papuano (3巻、1877年–1889年)
• - Nelle Foreste di Borneo. Viaggi e ricerche di un naturalista (ボルネオの森にて：ある博物学者の旅と研究、1902年)
• - Asiatic Palms (アジアのヤシ、1908年)
• - Palme del Madagascar descritte ed illustrate (マダガスカルのヤシ：記述と図解、1912年)
• - Nova Guinea, Selebes e Molucche. Diari di viaggio ordinati dal figlio Prof. Dott. Nello Beccari (ニューギニア、セレベス、モルッカ諸島：息子ネッロ・ベッカーリ教授博士により整理された旅日記、1924年、没後刊行)

もう一度検索