サラワク王国

サラワク王国：白人王が築いたボルネオの王国

サラワク王国は、1841年から1946年まで、ボルネオ島北部（現在のマレーシア・サラワク州とブルネイ）に存在したユニークな王国でした。この王国は、ジェームズ・ブルックによって建国され、ブルック王朝の3代にわたる「白人王」によって統治されたことで知られています。

建国の背景

19世紀半ば、ブルネイでは原住民の反乱が頻発していました。ブルネイのスルターンは、1839年にサラワクのクチンに到着したイギリス人探検家、ジェームズ・ブルックに鎮圧を依頼します。ブルックは、英国海峡植民地政庁の協力を得て反乱を鎮圧することに成功し、その褒賞としてサラワクを割譲され、藩王（ラージャ）に任じられました。こうしてブルックは「白人王（White Raja）」の称号を与えられ、サラワク王国が建国されたのです。

領土拡大と財政難

建国後、ブルックはイギリスの後ろ盾を得て、ブルネイの領土を次々と奪い、王国の領土を拡大していきました。しかし、その一方で王国の財政は悪化し、ブルックに連れられてきた中国人たちが反乱を起こすなど、国内は不安定な状況に陥ります。ブルックはイギリスに王国の買収を働きかけますが、関心を示されませんでした。

二代目、三代目の統治と日本の占領

ブルックの死後、王国は甥のチャールズ・ブルックに引き継がれ、財政はわずかに立ち直ります。その後、チャールズの息子であるヴァイナー・ブルックが王位を継承しました。1941年には、建国100周年を記念して憲法が制定され、立憲君主国となります。しかし、その直後に太平洋戦争が勃発。日本軍がボルネオ島に侵攻し、サラワクを占領しました。ヴァイナー王はオーストラリアに亡命し、サラワクは日本軍の軍政下に置かれることになります。

王国の終焉

日本降伏後、ヴァイナーは支配権を売却して王位を辞退し、サラワクはイギリスの直轄植民地となりました。こうして、3代続いたサラワク王国は、建国からちょうど100年でその歴史に幕を閉じたのです。ヴァイナーは支配権の売却によって、大金と好物であった大量のジャムを手に入れたと伝えられています。

経済政策

歴代の白人王は、「文化が進んだ少数のヨーロッパ人のために、先住民の利益を犠牲にしてはならない」という考えのもと、外国資本による搾取から先住民を保護する政策を採っていました。そのため、サラワク王国では、国是として外国資本の投資や開発を原則として禁止していました。

しかし、例外的に英国のボルネオ会社には、1857年から1923年までの期限付きで、石炭を除く一切の鉱業独占権が付与されていました。これは、ボルネオ会社がサラワク王国建国を財政的に支援し、また中国人の反乱時に軍事的援助を提供し、国王の信頼を得ていたためです。

また、日本の日沙商会も1911年に土地の租借を許可され、大規模なゴムのプランテーションを経営していました。これは、プランテーションの開拓と殖産について、依岡省三とその事業を継承した依岡省輔が国王からの信頼を得ていたからです。しかし、日本の敗戦により、日沙商会の資産は全て没収され、邦人は強制帰国させられました。

サラワク王国は、その特異な成立の経緯と、白人王による統治という点で、世界史上でも稀有な存在でした。その歴史は、植民地時代における多様な側面を私たちに教えてくれます。


参考文献
吉田一郎『消滅した国々』社会評論社、2012年。 

関連項目

サラワク反割譲運動
海峡植民地
サラワク国有鉄道
英領マラヤ
蔵原惟繕（映画監督、サラワク王国生まれ）

外部リンク
『サラワク王国』 - コトバンク

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