オフ・ザ・グラウンド

アルバム「オフ・ザ・グラウンド」

ポール・マッカートニーのアルバム『オフ・ザ・グラウンド』は、1993年にリリースされ、彼の音楽スタイルや創造力の進化を示す重要な作品です。このアルバムの録音は、1989年から1990年にかけて行われたワールド・ツアー『The Paul McCartney World Tour』のサポート・メンバーと共に進められました。このプロセスでは、バンドらしいサウンドを重視し、楽曲を一つ一つ仕上げる手法が取られました。その特徴の一つは、リハーサルを経た上でのワンテイク録音と、必要最小限のオーヴァーダビングを基本にしている点です。

本作に収められた楽曲の中には、前作『フラワーズ・イン・ザ・ダート』で作られた曲も含まれています。「ミストレス・アンド・メイド」や「ザ・ラヴァーズ・ザット・ネヴァー・ワー」は、エルビス・コステロとの共作であり、このアルバムの録音には参加していませんが、両曲は重要な要素となっています。また、オーケストラの編曲や指揮は、カール・ディヴィスが手がけ、「カモン・ピープル」と「ミストレス・アンド・メイド」にはジョージ・マーティンが関与しています。

アルバムの制作過程では、レコーディングの合間にリハーサルで演奏された楽曲も多く、特に「バイカー・ライク・アン・アイコン」や「ピース・イン・ザ・ネイバーフッド」の2曲は、本作に先立ってのリハーサルで形にされました。このような経緯からも、アルバム全体に生々しいエネルギーが感じられます。そして、シークレット・トラックとして収録された「コズミカリー・コンシャス」は、1968年のビートルズのインド滞在時に制作されたもので、過去の音楽が現在に引き継がれる様子を象徴しています。

マッカートニーは1993年3月に行ったインタビューで、アルバムの録音にあたって思い出深いスタジオでの時間を振り返り、挑戦的な楽曲製作への意欲を語りました。彼は日々の創作活動において「良い曲が作れる」という期待感があったことを強調し、音楽制作への情熱を覗かせています。

このアルバムには限定盤『ザ・コンプリート・ワークス』が後にリリースされ、未発表音源12曲が付属しており、その中にはシングルのカップリング曲やMTVアンプラグドでのライブ音源も含まれています。

収録曲一覧

1. オフ・ザ・グラウンド - "Off the Ground"
2. ルッキング・フォー・チェンジズ - "Looking for Changes"
3. 明日への誓い - "Hope of Deliverance"
4. ミストレス・アンド・メイド - "Mistress and Maid"
5. アイ・オウ・イット・オール・トゥ・ユー - "I Owe It All to You"
6. バイカー・ライク・アン・アイコン - "Biker Like an Icon"
7. ピース・イン・ザ・ネイバーフッド - "Peace in the Neighbourhood"
8. ゴールデン・アース・ガール - "Golden Earth Girl"
9. ザ・ラヴァーズ・ザット・ネヴァー・ワー - "The Lovers That Never Were"
10. ゲット・アウト・オブ・マイ・ウェイ - "Get Out of My Way"
11. ワインダーク・オープン・シー - "Winedark Open Sea"
12. カモン・ピープル - "C'mon People"
13. コスミカリー・コンシャス - "Cosmically Conscious"

シークレット・トラックとして収録された「コスミカリー・コンシャス」は短縮版で、後にシングル「オフ・ザ・グラウンド」のフルバージョンとしてもリリースされています。

全体として、アルバム『オフ・ザ・グラウンド』は、ポール・マッカートニーの多様な音楽的アプローチと、家族や友人との深いつながりから生まれた感動的な作品として位置づけられるでしょう。

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