オペル・セネター

オペル セネター：欧州高級セダン市場に挑戦した孤高の存在

オペル セネターは、ドイツの自動車メーカー、オペルが製造・販売したアッパーミドルクラスのセダンです。欧州ではEセグメントに分類され、同社の最上級車として、BMW 5シリーズやメルセデス・ベンツ、アウディ 100など、強力なライバルと競合しました。イギリスではボクスホールブランドで販売され、ドイツのテレビドラマ『アラーム・フォー・コブラ11』でも、カーチェイスシーンなどで頻繁に登場したことで知られています。

セネターA (1977-1987): フラッシュサーフェスの先駆け

1977年に登場した初代セネターAは、前年に発売されたレコルトEのプラットフォームを延長して開発されました。特徴的なのは、当時としては斬新だったフラッシュサーフェスボディで、後のアウディ100（C3モデル）や日産レパード（F30系）にもその影響が見られます。ファストバッククーペ版のモンツァも同時に発売されました。1983年にはマイナーチェンジを行い、高級感を向上させています。

日本への導入は、当初排出ガス規制をクリアできず遅れましたが、1984年頃に東邦モーターズが直列6気筒エンジン搭載車を販売開始。しかし、ブランド力の弱さ、信頼性の低さ、そして670万円という高価格が重なり、販売は低迷しました。イギリスではヴォクスホール・ロイヤル、南アフリカではシボレー・セネターとして販売され、韓国の大宇自動車ではデーウ・ローヤルプリンスとして1990年代まで販売されていました。

セネターB (1987-1994): オメガとのプラットフォーム共有と高級志向

1987年に登場した2代目セネターBは、オペルのミドルサイズセダンであるオメガとプラットフォームを共有。クーペモデルは設定されませんでした。カデットE GSiの流れを汲む空力ボディと広々とした室内空間は、ライバル車よりも優れていました。オメガと共通のイメージを持ちながらも、格子状のグリルやウォールナットパネルなど、フラッグシップモデルとしての高級感を演出したインテリアが特徴でした。

日本市場では、東邦モーターズが3リッターモデルのセネターCDを623万円で販売。その後、いすゞ自動車が販売を引き継ぎ、600万円を切る価格で販売を開始しました。日本仕様車の右ハンドル車は、通常はイギリスのボクスホール工場で生産されていましたが、日本向けはドイツ本国で生産されていました。しかし、派手な広告戦略がないことや、オメガに3リッターモデルが追加されたことで価格競争力が低下、販売は低迷を続けました。1990年にはマイナーチェンジで電動格納式ドアミラーやアルミホイールなどを追加し高級感を高めましたが、販売状況は改善しませんでした。

1994年、オメガのフルモデルチェンジに伴い、セネターは廃止されました。セネターBのリアコンビネーションランプは、イギリスの高級車ブリストル・ブレニムにも採用されています。セネターCD (2968cc, 175馬力)や、DOHC 24Vエンジンを搭載したセネターCD 24V (2968cc, 200馬力)なども存在しました。オメガとの棲み分けは、オメガがスポーツ志向、セネターがラグジュアリー志向というものでした。ヤナセにオペルの販売権が移行する際、オメガは継続して販売されましたが、セネターは輸入が打ち切られました。セネターは、欧州高級車市場に挑戦したものの、ブランド力や価格、販売戦略などの要因が重なり、市場で成功を収めることができませんでした。

もう一度検索