オボトリート族

オボトリート族：北ドイツを支配した西スラヴ人

オボトリート族（またはオボドリート族）は、現在のドイツ北部、メクレンブルク＝フォアポンメルン州を中心とする地域を支配した西スラヴ人の部族です。彼らの歴史は、周辺のゲルマン民族や他のスラヴ民族との複雑な関係の中で展開されました。

歴史

8世紀、オボトリート族は、ザクセン人やヴェレティ族との戦いにおいて、フランク王国のカール大帝と同盟を結びました。798年には、族長トラスコのもと、ボルンヘーフェトの戦いでザクセン人を破るという戦果を挙げています。これにより、神聖ローマ皇帝によってザクセン人がエルベ川以北のホルシュタインから駆逐され、804年にはその地がオボトリート族に与えられました。しかし、その後デーン人の侵攻を受け、この地域は再びザクセン人の支配下に戻ります。

12世紀に入ると、オボトリート族の族長プリビスラフが、ザクセン公ハインリヒ獅子公によってメクレンブルク侯に叙せられます。これにより、ザクセン公の宗主権を受け入れることとなり、オボトリート族の独立支配は終焉を迎えました。この出来事は、後のメクレンブルク家の成立へと繋がります。

オボトリート連合

830年にレーゲンスブルクで編纂された『バイエルン地理学者』には、エルベ川東岸に居住する中央ヨーロッパ東部の部族名一覧があり、その中に「Nortabtrezi（オボリート族）」の名前が記されています。この文献によれば、オボリート族は53の「キウィタス」（政治共同体）を有していたとされています。

ブレーメンのアダムは、これらの共同体について、北欧系とスラヴ系の人々が共生し、盛んに交易を行う「レリク（Reregi）」であると述べています。ドイツ語文献においては、他のスラヴ系集団とまとめて「ヴェンド人」と記述されることもあります。

オボトリート部族連合は、以下の主要な部族によって構成されていました。

オボトリート本流：バルト海南西部からシュヴェリーン湖の一帯を支配。
ヴァグリア族：古ザクセンの一部、ホルシュタイン東部を支配。
ワルノウ族：ヴァルノウ川上流からミルデニツ川の流域を支配。
ポラーベン族本流：トラーヴァ川とエルベ川に挟まれた地域を支配。

また、オボトリート部族連合と関連のある部族としては、Linonen、Travnjane、ドレヴァニ族などが挙げられます。

歴代族長

オボトリート族の支配者は、プリビスラフ（メクレンブルク侯）を最後に、その後メクレンブルク公へと称号を変えて存続しました。

まとめ

オボトリート族は、中世初期の北ドイツにおいて、重要な役割を果たした西スラヴ人の部族でした。彼らは、周辺のゲルマン民族との間で勢力争いを繰り広げながらも、独自の文化を築き上げました。彼らの歴史は、中世ヨーロッパの民族移動や政治状況を理解する上で、重要な手がかりとなります。

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