オモダカ科

オモダカ科（Alismataceae）

オモダカ科は、被子植物に属する科の一つで、そのほとんどが水生多年草です。抽水性、浮葉性、沈水性の種があり、河川や湿地などの水環境に広く分布しています。草丈は数センチメートルから1メートル近くまでと様々で、日本を含むアジア、南北アメリカ大陸など、世界中に生育しています。

形態

オモダカ科の植物は、短い茎が直立するか、あるいは匍匐茎となり、ランナーを出して新しいシュートを形成するものもあります。花は、水上に伸びる花茎に輪生状につくか、総状または円錐花序を形成しますが、匍匐茎の葉の付け根に直接つくこともあります。花は両性花をつける種と、単性花をつける種があり、雌雄異株の種も存在します。花弁は3枚です。

分布と生態

オモダカ科は世界中に11属、約90種が生育しています。主に湿地、ため池、水田などに分布し、種子による繁殖のほか、塊茎や栄養芽などによる無性生殖を行う種も多く見られます。

人間との関わり

オモダカ科の植物は、食用、薬用、観賞用として人間生活に関わっています。クワイのように食用とされるものや、サジオモダカのように薬用に用いられるものもあります。一方で、ウリカワやオモダカのように水田雑草として扱われることもあります。近年では、アクアリウムや園芸目的での栽培も盛んに行われ、「メダカのよろこぶ水草」として販売されることもあります。また、ヘラオモダカなどはゲンゴロウ類の産卵場所としても重要な役割を果たしています。

日本では、オモダカは「勝ち草」とも呼ばれ、戦国武将や大名の間で、オモダカの葉を意匠化した沢瀉紋が家紋として用いられました。豊臣氏、木下氏、福島氏などがその例として知られ、毛利氏も副紋として使用していました。徳川家の家臣である水野氏も沢瀉紋を使用しており、広く一般に知られた家紋の一つです。

分類

日本では、オモダカ属、ヘラオモダカ属、マルバオモダカ属の3属が知られています。オモダカ属のみが単性花で、ヘラオモダカ属とマルバオモダカ属は両性花です。

主な属と種

サジオモダカ属（Alisma）
ヘラオモダカ (Alisma canaliculatum)：北海道から琉球に分布する抽水植物。葉の基部が緩やかにつながることでサジオモダカと区別されます。
サジオモダカ (Alisma plantago-aquatica var. orientale)：北日本、朝鮮半島、中国東北部に分布する水草。塊茎は漢方薬として用いられ、利尿作用があります。
トウゴクヘラオモダカ (Arisma rarifolium)：本州の一部に分布する抽水植物。花茎の第一分岐が2つであることでヘラオモダカと見分けられます。
マルバオモダカ属（Caldesia）
マルバオモダカ (Caldesia parnassifolia)：日本、中国、ヨーロッパ、アフリカなどに分布する浮葉～抽水植物。秋に花茎に多数の殖芽を形成します。
オモダカ属（Sagittaria）
オモダカ (Sagittaria trifolia)：本属の代表的な種で、水田雑草として知られていますが、観賞用としても栽培されます。矢尻形の葉が特徴です。改良品種にはクワイがあり、塊茎が食用とされます。
サジタリア (Sagittaria subulata var. subulata)：北米から中米に分布し、細長い葉を持つ水草。アクアリウムで古くから栽培されています。
ウリカワ (Sagittaria pygmaea)：日本各地に分布する小型の種で、細長い葉が特徴。水田雑草として見られます。

その他、バルデリア属、エキノドルス属、Luronium属など、観賞用としてアクアリウムで用いられる種も存在します。

その他

澤瀉紋：オモダカの葉を意匠化した家紋で、多くの武家が使用しました。
アクアリウム：観賞用として、オモダカ科の植物が広く利用されています。

参考資料

富沢直人、山崎浩二『アクアリウムで楽しむ水草図鑑』（ピーシーズ、2001年）　p126 - p153
角野康郎『日本水草図鑑』（文一総合出版、1994年） p16 - p23

関連項目

* 澤瀉屋

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