オヤケアカハチ

オヤケアカハチ：八重山の英雄

オヤケアカハチ（遠弥計赤蜂、於屋計赤蜂）は、15世紀末に石垣島の大浜村を拠点とした豪族の首領です。彼の生涯は謎に包まれていますが、八重山の人々から英雄として仰がれています。

生涯

アカハチの生誕地は波照間島とも言われていますが、定かではありません。琉球王国の史料には、彼は大浜の一豪族として登場し、石垣村の長田大主の妹を妻としていました。彼は八重山の首領として島民の支持を集め、琉球への朝貢を拒否し、宮古を攻めたため、1500年に琉球軍によって討伐されたとされています。これが「オヤケアカハチの乱」です。

しかし、八重山・宮古の史料によれば、当時の宮古・八重山は琉球に属さない大平山という連合体でした。宮古の首領であった仲宗根豊見親が琉球に恭順し、八重山にも同様の関係を求めたのに対し、オヤケアカハチは抵抗しました。彼は島民から厚い信頼を得ており、乱の際には女性も共に琉球軍に対抗したと記録されています。

石垣島の崎原公園にある「オヤケ赤蜂之碑」には、琉球の尚真王が石垣の土着神であるイリキヤアマリ神の祭祀を弾圧したため、オヤケアカハチが島民を率いて反旗を翻したと記されています。大浜公民館近くの像の碑文には、彼が独立心が強く、正義感にあふれた人物として描かれており、八重山の人々から太陽のように崇められていたと記されています。

敗北したものの、琉球の侵攻から大平山を守ろうとしたオヤケアカハチは、先島諸島の英雄として語り継がれています。イリキヤアマリ神を祀る御嶽も残り、信仰の対象となっています。居宅は現在の大浜公民館付近とされていますが、フルスト原遺跡を居城跡とする説もあります。

洪吉童との同一人物説

韓国では、小説『洪吉童伝』の主人公である洪吉童とオヤケアカハチを同一人物とする説があります。これは日本の「義経=ジンギスカン説」に似たもので、洪吉童が八重山諸島に逃れたというものです。しかし、洪吉童はあくまで架空の人物であり、この説は歴史的な根拠に乏しいとされています。

この説は、沖縄と韓国の友好事業の題材となることもありますが、日本の研究者からは否定されています。2001年には石垣市で「ミュージカル・ホンガワラ」の公演が予定されていましたが、歴史教科書問題の影響で中止されました。

イベントと関連作品

石垣市大浜では、「アカハチまつり」や慰霊祭が行われています。また、伊波南哲の叙事詩やそれを原作とした映画、平田大一演出の現代版組踊り、奥田英朗の小説『サウスバウンド』など、オヤケアカハチを題材とした作品も存在します。

石垣島で品種改良された唐辛子「アカハチ」も、彼にちなんで名付けられました。

オヤケアカハチは、琉球王国に抵抗した悲劇の英雄であると同時に、先島の人々の誇りとして、その名は今も語り継がれています。

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