オラシオ・サルガン

オラシオ・サルガン：タンゴ界の巨匠

オラシオ・サルガン（Horacio Salgán, 1916年6月15日 - 2016年8月19日）は、アルゼンチンが生んだ偉大なタンゴ音楽家です。作曲家、ピアニスト、そして自身の楽団の代表として、タンゴの世界に革新的な風を吹き込みました。

生い立ちと初期の音楽活動

音楽的な環境に恵まれた家庭で育ったサルガンは、6歳からピアノを始め、13歳で音楽学校の最優秀生徒となるほどの才能を発揮しました。14歳からはプロのピアニストとして活動を始め、様々なジャンルの音楽を演奏し、腕を磨きました。20歳でロベルト・フィルポ楽団と契約、同時期にはミゲル・カロー楽団のアレンジも担当するなど、早くからその才能を開花させました。

楽団結成と革新的な音楽性

1944年、サルガンは自身の楽団を結成し、念願のリーダーとしての道を歩み始めます。しかし、1947年に楽団は一旦解散。1950年に再びオラシオ・サルガン楽団を結成し、独自の音楽性を追求しました。1950年代には、不協和音を積極的に取り入れるなど、従来のタンゴにはない斬新なアイデアを次々と打ち出し、聴衆からは「前衛的」と評されることもありました。

1960年には、キンテート・レアル（Quinteto Real）を結成。エレキギターを導入するという大胆な試みも行いました。キンテート・レアルには、後に著名なバンドネオン奏者となるレオポルド・フェデリコも在籍していました。キンテート・レアルとして3度の日本公演も成功させています。
1983年には、タンゴ・アルヘンティーノにもオリジナルキャストとして参加しました。

音楽家としての功績

サルガンは生涯で400曲もの作曲・編曲を手がけました。彼の演奏は数多くの動画として記録されており、その卓越した技術を垣間見ることができます。2004年には惜しまれつつも引退を表明し、ピアニストとしての役割を息子のセサルに譲りました。引退後も、ドキュメンタリー映画『アルゼンチンタンゴ伝説のマエストロたち』に出演するなど、タンゴ界に貢献し続けました。

サルガンの音楽

サルガンの音楽は、多くのレーベルからリリースされていますが、体系的なCD-BOXは未だ実現していません。2016年には生誕100周年を迎えましたが、キンテート・レアルやピアノデュオを除いたサルガン楽団単体の商用録音は、1950年からの24年間でCD6枚分ほどしかありません。しかし、その完成度は非常に高く、サルガンは「40年代のタンゴ黄金期を知る唯一のアヴァンギャルド・タンゴ音楽家」と呼ばれていました。日本の作曲家、瀧廉太郎の作品をアレンジした楽曲も残されています。

代表的な楽曲

ドン・アグスティン・バルディ (Don Agustín Bardi)
とろ火で (A fuego lento)
グリジード (Grillido)
彼女を口笛で呼ぼう (La llamo silbando)

ディスコグラフィー

* エル・チョクロ／オラシオ・サルガンの至芸 日本ビクター PHILIPS SFL-7201

オラシオ・サルガンの音楽は、今もなお多くの人々に愛され、タンゴの歴史に輝きを放っています。

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