オラニエンブルク強制収容所

オラニエンブルク強制収容所の歴史

オラニエンブルク強制収容所は、ナチス・ドイツが1933年にオラニエンブルクに設立した、最初期の強制収容所です。この収容所は、ナチス政権が権力を掌握する過程で、政治的反対勢力を抑圧する目的で設置されました。その後の変遷は、ナチス政権の組織構造とイデオロギーの変化を反映しており、強制収容所システムの発展を理解する上で重要な事例となります。

設立と初期の運営

1933年1月、アドルフ・ヒトラーがドイツ首相に任命されると、ナチス党は反対勢力の弾圧を開始しました。ヘルマン・ゲーリングはプロイセン州内相として、1933年2月27日の国会議事堂放火事件を契機に、共産党員らを収容するための施設をオラニエンブルクに設けました。これがオラニエンブルク強制収容所の始まりです。

当初、収容所の管理は突撃隊（SA）が行い、初代所長には突撃隊大佐のシュルツェ＝ヴェルツンゲンが就任しました。初期の収容者は、主にドイツ社会民主党員やドイツ共産党員などの左翼政治犯でした。この時期の収容所は、後年の強制収容所と比較すると収容者数も少なく、環境も比較的良好でした。囚人の日課は、起床、身支度、労働、教練、運動などで構成され、食事も栄養が行き届いたものであったと記録されています。これは、ゲーリングが収容者を単に隔離するだけでなく、思想を矯正し社会復帰させることに重点を置いていたためと考えられます。実際、1933年のクリスマスには、多くの収容者が恩赦されています。

運営体制の変化

1933年6月、ゲーリングは強制収容所の運営を補助警察（突撃隊、親衛隊、鉄兜団）に委ねることを決定しました。これにより、突撃隊だけでなく、親衛隊やゲシュタポも収容所の運営に関与するようになりました。ただし、所長は引き続きシュルツ＝ヴェルツンゲンが務め、しばらくの間は突撃隊が優位な立場を保っていました。しかし、1933年秋頃から刑事犯が送られてくるようになると、収容者の扱いは徐々に粗暴になっていきました。

1934年4月には、ゲシュタポの指揮権がゲーリングから親衛隊全国指導者ハインリヒ・ヒムラーに移り、ヒムラーが収容所運営に強い権限を持つようになりました。さらに、1934年6月30日から7月2日にかけて起こった「長いナイフの夜」事件で突撃隊幹部が粛清されると、突撃隊の勢力は衰退し、その役割は親衛隊に取って代わられました。これにより、オラニエンブルク強制収容所も親衛隊の管轄となり、1934年8月1日には国営化されました。

収容所の終焉とその後

シュルツ＝ヴェルツンゲンは親衛隊に忠誠を誓うことを条件にしばらく所長職に残りましたが、1934年9月のヒムラーの命令により、オラニエンブルク強制収容所は1935年3月をもって正規の収容所としての役割を終え、補助収容所へと格下げされました。そして1937年7月には、補助収容所としての役割も終了しました。

オラニエンブルク強制収容所の跡地には、強制収容所総監府・髑髏部隊総司令部が置かれました。その東側には、1936年7月よりザクセンハウゼン強制収容所が建設されました。オラニエンブルク強制収容所の歴史は、ナチスによる強制収容所システムの発展と、その組織構造の変化を示す重要な例です。

参考文献

長谷川公昭著『ナチ強制収容所 その誕生から解放まで』（草思社）ISBN 978-4794207401

もう一度検索