オランジュのローマ劇場とその周辺及び「凱旋門」

オランジュのローマ劇場と凱旋門：古代ローマの遺産

南フランスのプロヴァンス地方、ヴォクリューズ県に位置するオランジュは、古代ローマ時代の壮麗な遺跡を今に伝える街です。その中でも、特に有名なのがユネスコの世界遺産に登録されているローマ劇場と凱旋門です。これらの遺跡は、ローマ帝国の栄華と文化、そしてその後の歴史的変遷を雄弁に物語っています。

オランジュのローマ劇場：優れた保存状態を誇る古代劇場

オランジュのローマ劇場、別名古代劇場 (Théâtre antique) は、紀元1世紀、アウグストゥス帝の治世下に建設されました。他の都市の同種の遺跡と比較しても、その保存状態は驚くほど良好です。1951年には、アウグストゥス帝の像も発掘され、現在は劇場内の壁龕に収められています。

この劇場は、8000～10000人を収容できたと推定されており、当時の人々の娯楽の中心地として賑わっていた様子が想像できます。4世紀に放棄され廃墟と化した後も、中世には防衛拠点として再利用されるなど、長きに渡り人々の生活に寄り添ってきた歴史があります。

1825年からは、プロスペル・メリメの発案による修復計画が開始され、建築家シモン＝クロード・コンスタン＝デュフーの手によって、丁寧に修復作業が進められました。そして、1869年からは毎年夏に芸術祭が開催されるようになり、現在まで続いています。当初は「ローマ祭」と呼ばれていましたが、1902年に「コレジー (Chorégies d'Orange)」と改称されました。コレジーとはギリシャ語で「舞踏」などを意味する言葉で、この芸術祭が古代ギリシャの伝統を受け継いでいることを示しています。

劇場周辺：古代都市の面影

ローマ劇場周辺の劇場地区 (le quartier du Théâtre) は、古代都市オランジュの生活を垣間見れる貴重な場所です。発掘調査によって、祭壇などの遺構が発見されており、当時の宗教儀式や社会構造を知る手がかりとなっています。

オランジュの凱旋門：アグリッパ街道のランドマーク

オランジュの凱旋門は、リヨンとアルルを結んでいた古代ローマの街道、アグリッパ街道の途上に位置しています。ローマ劇場や市庁舎のある区域からは少し北に離れた場所にあります。紀元前20年頃頃に建設されたと推定されており、ガリア人とローマ人の戦闘や戦利品などを描いた精緻なレリーフが刻まれています。特に北面のレリーフは保存状態が良好で、古代ローマの芸術技術の高さを示す貴重な資料となっています。

世界遺産登録基準

オランジュのローマ劇場と凱旋門は、以下の世界遺産登録基準を満たしていることから、ユネスコの世界遺産に登録されました。

(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの。

これらの遺跡は、古代ローマ時代の建築技術や芸術、そして社会構造を理解する上で極めて重要な役割を果たしており、未来へと続く歴史の証として、大切に保存・継承されていくべきものです。

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