オランダの中庭

『オランダの中庭』

概要

『オランダの中庭』（原題: Binnenplaats van een huis in Delft）は、17世紀オランダの黄金時代を代表する画家、ピーテル・デ・ホーホによって1658年から1660年の間に描かれた油彩画です。この作品は1937年にアンドリュー・メロンのコレクションからワシントン・ナショナル・ギャラリーへ寄贈され、その魅力を今に伝えています。本作と同様の構図を持つ『中庭で喫煙する男と飲酒する女』は、デン・ハーグにあるマウリッツハイス美術館に所蔵されていますが、描かれている男性の姿が一人減っている点が特徴です。

来歴

ワシントン・ナショナル・ギャラリーによると、この作品はアルフレッド・ド・ロスチャイルドのコレクションにあり、彼の非嫡出子であるアルミナ・ハーバート（カーナーヴォン伯爵夫人）によって受け継がれました。1924年にデュヴィーン兄弟に売却後、同年11月にアンドリュー・メロンに転売されました。メロンは1934年12月に「ピッツバーグA.W. メロン教育慈善信託」に譲渡し、1937年にワシントン・ナショナル・ギャラリーに寄贈されました。

背景

デ・ホーホは初期に直面した風俗画において、居酒屋や兵士を描く派手さのないスタイルを持っていました。1652年以降、アムステルダムに移住した後、1660年から61年頃までデルフトに暮らし、1657年からは人物を上品な室内に配置するスタイルへと変化を送り始めました。この期間に、本作のようにデルフトをテーマにした中庭の絵画も数点制作しています。本作の細やかな描写は、フェルメールの『小路』に似た要素を持ち、二人の画家が互いに影響を与え合いながら腕を磨いていったことが窺えます。

作品詳細

本作に描かれているのは、日当たりの良い中庭の光景です。場面の中央には、青いエプロンをつけた女性が細長いグラスでビールを飲み、その横に座る男性がタバコを楽しんでいます。子供が赤く燃えた石炭の入った壺を持ち運んでおり、彼らのリラックスした姿が目を引きます。この青いエプロンは当時、使用人のものとして知られていて、この女性は間違いなく召使いであり、彼女の傍らにいる紳士に仕えていることが伺えます。

マウリッツハイス美術館にある同じ構図の作品では、テーブルの背後にいるはずの男性がいないことが特徴です。科学的な調査によって、その男性が本来描かれていたことが分かっています。

作品に対する評価

1910年にホフステーデ・デ・フロートによりこの作品について次のように記載されています。「中庭で2人の騎士と1人の女性が楽しんでいる様子が描かれており、光線効果が非常に精妙で、構図は素晴らしい」と評価されています。光と影の効果を巧みに活用したこの作品は、それぞれの人物の位置が明確で、観る者に印象的な情景を提供します。

[参考文献]

売却歴

本作は1820年8月28日にアムステルダムの画商C.S. Roosから販売された記録が残り、その後1842年にはロスチャイルド家の所有となりました。ロンドンのライオネル・ド・ロスチャイルド氏のコレクションを経て、最終的にアルフレッド・ド・ロスチャイルドの所有となったと考えられています。

このように『オランダの中庭』は今もなお、17世紀オランダの文化や日常生活を感じさせる貴重な作品として、多くの人々に愛され続けています。

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