オリエンタル (キュイ)

『オリエンタル』（仏：Orientale）作品50-9は、ツェーザリ・キュイが作曲したヴァイオリンとピアノのための愛らしい小品であり、彼の作品の中で最もよく知られています。演奏時間は約2分と短いながらも、その旋律は聴く人の心に深く残ります。

この楽曲は、1893年に作曲されたヴァイオリンとピアノのための24の小品集「万華鏡」（仏：Kaléidoscope）の第9曲目を飾ります。この曲集の中でも、ロシア民謡風の旋律が印象的な第5曲目「子守歌」（仏：Berceuse）もまた、単独で演奏される機会が多いことで知られています。

日本における演奏史を紐解くと、1934年には、当時わずか14歳という若さの諏訪根自子が、コロムビアレコードにSPレコードとしてこの曲を録音しています。これは、日本における初期の貴重な記録の一つと言えるでしょう。

楽曲構成は以下の通りです。
拍子: 8分の6拍子
調: ト短調

ヴァイオリンがピッツィカートとアルコを巧みに使い分け、リズミカルな伴奏を奏でます。その旋律に乗せて、ピアノが東洋的な雰囲気をたたえたメロディを奏で、その後、ヴァイオリンへと引き継がれます。このメロディは、セルビア民謡「明るい太陽」から引用されており、同時代のロシアの作曲家たちにも愛され、チャイコフスキーの「スラヴ行進曲」やリムスキー＝コルサコフの「セルビア幻想曲」などにも用いられています。同じ旋律が繰り返され、最後はまるで消え去るかのように静かに幕を閉じます。

1920年代には、ポール・ホワイトマンによってフォックストロットに編曲され、新たな魅力が引き出されました。

関連項目

12のスペイン舞曲 - エンリケ・グラナドスのピアノ曲集。第2曲に「オリエンタル」が含まれています。曲集の第3集（第7-9曲）はキュイへのオマージュとして捧げられています。

外部リンク

Trove Digital Collections （『オリエンタル』の楽譜を公開）
* Kaleidoscope, Op.50 (Cui, César)の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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