オリエントサルーン

オリエントサルーンは、日本の国有鉄道（国鉄）およびその民営化後の東日本旅客鉄道（JR東日本）が、1987年から2000年まで所有していた特別な改造客車、いわゆる「ジョイフルトレイン」の一つです。

概要

この車両は、1987年1月に当時の仙台鉄道管理局向けに、既存の12系客車を基に改造されて誕生しました。基本的な構造はお座敷列車としての和式ですが、随所に欧風のデザインを取り入れたことが最大の特徴です。車内は絨毯敷きで、座椅子と座卓を配置した和洋折衷の様式を採用。専用の仕切り板を設置することで、客室を独立した空間（個室）として利用できる構造も備えていました。

車両構成と外観

オリエントサルーンは、合計6両で構成される固定編成でした。内訳は、編成の両端に連結される展望車が2両、中間車両のうち一般車が3両、そしてイベント専用車が1両です。全車両がグリーン車扱いとされていました。種車となった12系客車からの主な変更点として、車体塗装は深みのあるボンマルーン（えんじ色系）を基調とし、車体の上部、窓下、裾部分には金色の帯が巻かれ、各車両には独自のシンボルマークが配されていました。定員は展望車が28名、一般車が38名で、イベント専用車は定員外でした。

車両別の特徴

一般車 (オロ12形)

郡山工場（現在の郡山総合車両センター）で改造された一般車は、和式車両の特性として床面に跳ね上げ式の通路が設けられていました。座椅子や座卓は使用しない際には床下に収納可能でした。全面絨毯敷きとすることで欧風の雰囲気を演出。客室内は3箇所に仕切り板を装着することで、最大4つの独立した部屋に区切ることができました。従来の網棚は撤去され、側面上部に荷物入れを新設。暖房装置も床面積を確保するため側面上部に移設されています。室内の両端には28インチのモニターテレビとカラオケ装置を備え、個室化した際には各部屋に11インチのモニターテレビを設置可能でした。使用しない仕切り板や小型モニターは車端部の収納庫に収められました。デッキと客室の間には給茶器があり、編成中の2号車と5号車には冷蔵ショーケースも設置されていました。窓は従来のユニット窓（上段下降・下段上昇式）を維持しつつ、カーテンはローマンシェードに変更されています。外部では、トイレ・洗面所と反対側の側面ドアが塞がれ、屋根上の分散式冷房装置が1基撤去され、5基となりました。

展望車 (スロフ12形)

大宮工場（現在の大宮総合車両センター）で改造された展望車は、種車のスハフ12形に乗務員室があった側の連結面を内側に向けて、その端部を切り落とし、新たに展望室部分を接合するという大胆な改造が行われました。車体下部にはスカートが取り付けられています。車両全体の約4分の1を占める展望室は、前面と側面の大部分がガラス張りで、側面には天窓も設けられており、非常に開放的な空間でした。展望室内の窓枠は金色に塗装され、天井には金色枠にクリスタルガラスがはめ込まれたシャンデリアが設置されていました。室内にはソファが置かれ、床には絨毯が敷かれていました。編成の1号車と6号車ではソファの配置が若干異なり、特に6号車には円形ソファと横引き式のカーテンが採用されていました。展望室以外の部分は一般車とほぼ同一の仕様で、仕切り板により3室に区分けが可能でした。なお、展望車からはトイレ・洗面所が撤去されています。サービス電源については、従来の12系客車と同様に床下に発電用エンジン（DMF15HZ-G形）と発電機（DM93形）を装備し、編成全体に電力を供給していました。

イベント専用車 (オロ12形)

一般車と同様に郡山工場で改造されたイベント専用車は、客室の中央部が絨毯敷きのフリースペースとなっていました。青森方の車端部はイベント用ステージとして活用され、37インチの大型モニターテレビ、カラオケ機器、スピーカー、スポットライトといった設備が設置されていました。ステージの後方には更衣室があり、そのさらに後ろはフリースペースで使用する椅子やテーブルを収納するスペースとなっていました。上野方の車端部には、回転椅子を備えたカウンターテーブルが設けられ、カウンター内部にはカラオケや車内放送用の機器制御装置などが搭載されていました。また、この車両から撮影した映像を他の車両のモニターに映し出す機能も有していました。他の車両と同様に、側面からの出入口は1箇所のみとされ、窓もユニット式のままでしたが、カウンターや更衣室などの設置により一部の窓が埋められています。カーテンは他の車両と異なり横引き式が採用され、トイレ・洗面所は撤去されました。

専用機関車

オリエントサルーンの専用牽引機として、ED75形電気機関車の711号機などが車両と同色の特別塗装を施されて運用されました。しかし、これらの専用塗装機は後に廃車されるか、元の塗装に戻され、2005年までに姿を消しています。

運用と終焉

改造完了後、オリエントサルーンは福島客貨車区に配置され、1987年 2月7日に営業運転を開始しました。国鉄分割民営化後、JR東日本の東北地域本社（現在の仙台支社）に承継され、仙台電車区（現在の仙台車両センター）へ転属しました。長年の活躍により老朽化が進んだことから、2000年 10月30日から11月5日にかけてさよなら運転が実施されました。多くのファンに見送られた後、同年11月17日に廃車され、その歴史に幕を閉じました。

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