オリエント・エクスプレス '88

オリエント・エクスプレス'88

企画の背景と動機

1988年にフジテレビの開局30周年を記念して開催された「オリエント・エクスプレス'88」は、特別な鉄道イベントであり、オリエント急行を日本に導入する夢の実現を目指した企画です。このイベントの始まりは、フジテレビが1982年に制作した特別番組『夢のオリエント急行』に遡ります。この番組は、オリエント急行が再び運行されることを受けての制作でした。企画のエグゼクティブプロデューサーを務めた沼田篤良は、この列車を日本に走らせるアイデアを膨らませるうちに、オリエント急行の魅力に惹かれていきました。

沼田は、オリエント急行の名を冠する列車が東洋に実際に乗り入れることがないもどかしさを感じつつ、各国を経て日本に到達させるという壮大な構想を思いつきます。さらに、このアイデアは当時のイントラフルーク社社長からの後押しも得て、地道な準備が始まります。

具体的な実現過程

1984年以降、沼田は具体的なプランを練り始め、国内外の関係者と次々に相談を重ねました。英国放送協会（BBC）や鉄道ファンらに意見を聞く中、「理論的には可能」というポジティブな回答を受け取りますが、日本国内では逆に厳しいとされました。しかし、JR東日本の山之内秀一郎は興味を示し、オリエント急行を通過させるための実現可能性を調査することを約束します。

さらに、1986年にはフジテレビの対応も変わり、企画が具体化し始めました。開局30周年という特別な背景があった今、国内の鉄道団体や企業が協力し、各国を通過するための交渉を始めました。

車両の調整と国際交渉

日本国内での運行のため、オリエント急行の車両を多くの条件に適合させる必要がありました。これには、車両の幅や長さ、連結器の変更などが含まれ、実際には非常に技術的な課題を解決する必要がありました。たとえば、オリエント急行の車両は、全長が長く、曲線の通過時に国の規定に抵触するリスクがあったため、線路の移設が求められました。

また、国際的な交渉では、英語で運行実施された過去の経験を元にフィードバックを重ね、通過国とも円滑な調整を図りました。特にソビエト連邦のゴルバチョフ政権時代は開放的であったため、通過の許可は比較的スムーズに進みます。日本に向かうオリエント急行の運行を成功させるための多くのハードルをクリアすることができました。

日本国内での運行

1988年の運行はついに実現しました。オリエント急行は、パリから出発し、約14,600kmを走行し、香港へ。そして、再び日本に向かう船旅が始まります。日本に到着した後は、台風の影響を受けつつも、デザインとともに美しく改装を受け、運行が開始されました。1988年10月には、広島駅から東京を目指す運行を行い、その到着時にはギネス世界記録に認定されるという栄誉を手にします。

運行中は、観光名所を巡るツアーが組まれ、沿線の駅では一般公開が行われました。日本国内では高い人気を誇り、多くの申し込みがありました。さらに、後半にはD51形蒸気機関車が牽引に加わり、古き良き列車の懐かしさを求める人々の期待に応えました。

運行終了とその後の展開

1988年末、オリエント急行は日本での運行を終え、再びヨーロッパへと戻っていきました。その後、実現したこのイベントの影響は長く語り継がれ、フジテレビもその後の企業戦略に生かされました。また、オリエント急行の車両が日本の文化財として取り扱われ、多くの模型や記念品が製作されました。

日本国内でのオリエント・エクスプレス'88は、さまざまな夢と情熱が込められた鉄道イベントとして、今なお人々の心に刻まれています。

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