オルタナティヴ・カントリー

オルタナティヴ・カントリーとは

オルタナティヴ・カントリーは、1970年代後半から1980年代にかけて、メインストリームのカントリーミュージック、特にポップな要素が強まったカントリーミュージックへの反発として生まれた音楽ジャンルです。オルタナ・カントリー、インサージェント・カントリー、アメリカーナなど、様々な別名でも呼ばれます。

特徴

1990年代にオルタナティヴ・ロックと並行して、メインストリームのカントリーミュージックの伝統や業界から距離を置くミュージシャンやバンドを指す言葉として使われ始めました。多くのミュージシャンは、ナッシュビルの商業主義的な音楽制作やポップな傾向を避け、よりローファイなサウンドや、パンク・ロック、ロックンロールの美学を取り入れた音楽を追求しました。

オルタナティヴ・カントリーに分類されるアーティストの音楽スタイルは多岐にわたり、伝統的なアメリカン・フォーク、ブルーグラス、ロカビリー、ホンキートンクから、メインストリームのロックやカントリーと区別がつかないものまで存在します。そのため、このジャンルに分類されることを拒否するアーティストや、逆に自分たちこそオルタナティヴ・カントリーであると主張するアーティストもおり、定義は曖昧です。

オルタナティヴ・カントリー専門誌『ノー・ディプレッション』は、「オルタナティヴ・カントリー・ミュージックを保護する」という声明を出していました。

歴史

オルタナティヴ・カントリーは、ウディ・ガスリー、ハンク・ウィリアムズ、カーター・ファミリーといった伝統的なアメリカのカントリーミュージックを源流としています。また、カントリーミュージックにロックンロールのサウンドを融合させたカントリーロックからも影響を受けています。グラム・パーソンズはカントリーロックの創始者として知られていますが、マイケル・ネスミス、スティーヴ・アール、ジーン・クラークなども重要な革新者として挙げられます。さらに、パンク・ロックの持つエネルギーやDIY精神も、オルタナティヴ・カントリーの形成に影響を与えました。

パンクとカントリーの融合は、1980年代のジェイソン&ザ・スコーチャーズ、ザ・ロング・ライダーズ、Xといったバンドによって試みられました。そして、1990年にアンクル・テュペロが発表したアルバム『No Depression』は、初のオルタナ・カントリーアルバムとして広く認識され、その後のムーブメントを牽引しました。アルバムタイトルは、オルタナティヴ・カントリーを支持するオンライン掲示板や雑誌の名前にもなっています。

アンクル・テュペロは解散後、ウィルコ、サン・ヴォルト、ボトル・ロケッツといったバンドが結成され、オルタナティヴ・カントリーのシーンをさらに発展させました。ボトル・ロケッツは、フリークウォーター、オールド97'S、ロビー・ファルクスらと共に、シカゴを拠点とするインディーズレーベル「ブラッドショット・レコード」と契約し、インサージェント・カントリーと呼ばれるオルタナティヴ・カントリーの派生スタイルを開拓しました。その後、ブルー・マウンテン、ウィスキータウン、ブラッド・オレンジズ、ドライヴ・バイ・トラッカーズといったバンドがオルタナティヴ・カントリーの伝統を受け継ぎ、2000年代にはその多くがロックへと傾倒していきました。

主なアーティスト

ライアン・アダムス
ロザンヌ・キャッシュ
スティーヴ・アール
フライング・ブリトー・ブラザーズ
パティ・グリフィン
ナンシー・グリフィス
ザ・ジェイホークス
ライル・ラヴェット
オールド97'S
グラム・パーソンズ
アンクル・テュペロ
ギリアン・ウェルチ
ハンク・ウィリアムズ3世
ルシンダ・ウィリアムス
* ウィスキータウン

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