オレクサンドル・ドヴジェンコ

アレクサンドル・ペトローヴィチ・ドヴジェンコ（1894年9月10日 - 1956年11月25日）は、ウクライナ出身の映画監督、脚本家であり、ソ連映画界を代表する巨匠の一人です。セルゲイ・エイゼンシュテイン、フセボロド・プドフキンと並び称されますが、映画界への進出が比較的遅かったため、国外での知名度はやや低いかもしれません。

ドヴジェンコはウクライナの農村地帯で生まれ、幼少期には貧困と兄弟の死を経験しました。教師としてのキャリアをスタートさせた後、共産党に入党。その後、外交官としての経験も経て、1920年代半ばに映画の世界へと足を踏み入れます。

1926年からオデッサの映画撮影所で監督としての活動を開始。1928年の『ズヴェニゴーラ』で注目を集め、続く『武器庫』、『大地』でその地位を確固たるものとしました。特に『大地』は、農業集団化をテーマにした作品であり、その詩的な映像美と革新的な表現は、映画史における重要な作品として評価されています。しかし、その一方で、ソ連当局からは「敗北主義的」と批判を受け、再編集を余儀なくされるなど、政治的な圧力も経験しました。

ドヴジェンコの作品は、ウクライナの歴史や文化、社会問題を背景に、独特の詩的な映像美と深い人間洞察をもって描かれています。彼の作品は、単なるプロパガンダ映画ではなく、人間の感情や精神性を深く掘り下げたものであり、今日においても多くの観客を魅了し続けています。また、彼の映画制作に対する姿勢や思想は、後の映画監督たちに大きな影響を与えました。

映画監督としての活動だけでなく、全ロシア映画大学で教鞭をとり、セルゲイ・パラジャーノフなど多くの才能を育成しました。1956年11月25日に心臓発作で亡くなりましたが、その功績はソ連映画界において高く評価され、没後もその影響は色褪せていません。

ドヴジェンコのフィルモグラフィーには、以下の作品が含まれています。

ズヴェニゴーラ（1928年）
武器庫（1929年）
大地（1930年）
イワン（1932年）
航空都市（1935年）
シチョールス（1939年）
* ミチューリン（1948年）

これらの作品は、ドヴジェンコの創造性と芸術性を物語っており、映画史において重要な位置を占めています。

ドヴジェンコは、その才能と革新性によって、ソ連映画、ひいては世界映画史に大きな足跡を残した偉大な映画監督です。彼の作品は、時を超えて観る者の心を揺さぶり、そのメッセージは今日においても深く考えさせられるものがあります。

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