オレグ・マカロフ (宇宙飛行士)

オレグ・グリゴリイェヴィチ・マカロフは、1933年1月6日にソビエト連邦のトヴェリ州ウドムリャで誕生しました。彼は卓越した技術者であり、後にソビエト連邦を代表する宇宙飛行士の一人となりました。彼の生涯は、ソビエトの宇宙開発黎明期から発展期にかけて、技術と有人宇宙飛行の両面から深く関わった軌跡と言えます。

少年時代を過ごした後、マカロフは首都モスクワへ移り、ソビエト連邦の技術教育機関として名高いバウマンモスクワ高等技術学校で学びました。1957年に同校を卒業すると、彼は当時、ソビエトの宇宙開発計画を主導していたセルゲイ・コロリョフ率いる第1設計局（現在のRSCエネルギア）に入局します。ここでは、ソビエト初の有人宇宙船であるボストークの開発プロジェクトにおいて、設計エンジニアとして重要な役割を担いました。

宇宙開発の最前線で技術者としての経験を積む傍ら、マカロフは自身も宇宙へ旅立つことを志すようになります。1966年には、厳しい選抜を経て宇宙飛行士候補生に選ばれ、宇宙飛行に向けた訓練を開始しました。

当初、彼はソビエトの月周回飛行計画に従事しており、著名な宇宙飛行士アレクセイ・レオーノフと共に、月を周回するミッションに向けて訓練を重ねていました。しかし、1968年末にアメリカ合衆国のアポロ8号が人類初の月周回飛行を成功させたことにより、ソビエトの同計画は中止され、マカロフたちの訓練も方向転換を余儀なくされました。

新たな目標は、地球低軌道における宇宙ステーション運用やソユーズ宇宙船を用いたミッションとなりました。マカロフにとっての初の宇宙飛行は、1973年9月に実施されたソユーズ12号ミッションでした。これは、前年に発生したソユーズ11号の悲劇的な事故を受けて、宇宙船の安全性向上策の効果を確認するための重要な試験飛行であり、彼はこのミッションを成功させました。

彼の2度目の飛行機会は、1975年に訪れるはずだったソユーズ18a号ミッションでした。しかし、打ち上げの際にブースターロケットに重大な不具合が発生し、ミッションは開始後わずか21分で中断されました。乗員は緊急脱出システムによってカプセルを分離し、アルタイ山脈の過酷な環境下に不時着するという、間一髪の事態を経験しましたが、無事生還を果たしました。

この危険な体験を乗り越え、マカロフは再び宇宙へ旅立ちます。3度目の飛行は1978年1月、ソユーズ27号に搭乗し、軌道上の宇宙ステーション「サリュート6号」とのドッキングミッションに参加しました。サリュート6号にはすでにソユーズ26号のクルーが滞在しており、マカロフたちは彼らと合流後、わずか5日間の滞在でしたが、宇宙ステーションでの作業に従事し、帰還はソユーズ26号を使用しました。これは、異なるソユーズ宇宙船間でのクルー交換という、後の宇宙ステーション運用で重要となる技術の実証でもありました。

彼の宇宙飛行士としての最後のミッションは、1980年11月から12月にかけて行われたソユーズT-3でした。これは、ソユーズT型の最初の有人飛行であり、サリュート6号への技術クルー派遣という重要な目的を持っていました。このミッションの成功をもって、マカロフは合計4回の宇宙飛行を経験し、宇宙での総滞在時間は20日と17時間44分に及びました。

現役の宇宙飛行士として活躍する傍ら、マカロフはソユーズ17号やソユーズT-2といった他のミッションではバックアップクルーとしても貢献しました。

最後の宇宙飛行を終えた後も、彼は故郷とも言えるRSCエネルギアで働き続けました。ここでは、ソビエト、後のロシアの有人宇宙活動を支える上で重要な役割を果たした宇宙ステーション「ミール」や、ソビエト版スペースシャトル計画である「エネルギア-ブラン」といった次世代の宇宙開発プロジェクトにおいて、その豊富な経験と知識を活かしました。

その功績に対し、ソビエト連邦政府は彼に数々の栄誉を与えました。特に、ソビエト連邦最高の栄誉であるソ連邦英雄の称号を2度授与されたことは、彼の宇宙開発への貢献がいかに大きかったかを物語っています。また、レーニン勲章を4回受章するなど、その業績は高く評価されました。

オレグ・グリゴリイェヴィチ・マカロフは、2003年5月28日、モスクワにおいて心筋梗塞のため70歳で死去しました。エンジニアとして宇宙船を設計し、宇宙飛行士として自らその設計した宇宙船で宇宙へ旅立ち、そして帰還後は再び地上から宇宙開発を支えた彼の人生は、ソビエト、そしてロシアの宇宙史に不朽の足跡を残しています。

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