サリュート6号

サリュート6号（ロシア語: Салют-6）は、ソビエト連邦が運用したサリュート計画の宇宙ステーションの一つです。DOS-5の名称でも知られ、1977年9月29日にプロトンロケットによって軌道へ投入されました。これはソ連にとって第2世代に位置づけられる最初の宇宙ステーションとなります。

サリュート6号の基本的な設計は先行するサリュートシリーズを踏襲していましたが、いくつかの重要な改良が加えられていました。中でも特筆すべきは、船尾に追加された2つ目のドッキングポートです。これにより、同時に2機の宇宙船がドッキング可能となり、滞在クルーがいる状態での新たなクルーの受け入れや、無人貨物船プログレスによるステーションへの継続的な物資・燃料補給が実現しました。この機能は、宇宙ステーションの運用形態を、短期訪問を主体とするものから長期滞在を可能とするものへと大きく転換させる画期的な進歩であり、後の複数モジュール型長期研究ステーション（ミールや国際宇宙ステーションなど）の先駆けとなりました。

ステーションの航法システムは、サリュート4号の技術を基盤とし、デルタ半自動コンピューターによる軌道計算とKaskadシステムによる姿勢制御が行われました。電力供給は、可動式の3組のソーラーパネルから行われ、合計面積51平方メートル以上で最大4キロワットの電力を発電しました。熱制御システムもサリュート4号の設計を改良したもので、断熱材とラジエータを組み合わせて内部温度を調整しました。環境制御装置はサリュート3号で導入されたものが利用されています。姿勢制御には、サリュートシリーズで初めてジャイロダイン方式が試みられました。

居住環境も大幅に改善され、騒音対策が強化され、クルーには個別の睡眠区画が設けられました。シャワー設備やより広い運動スペースも導入され、長期滞在における快適性が向上しました。船外活動のために、前方トランスファ区画の側面に内開き式のハッチが設置され、エアロックとして機能しました。このコンパートメントには、初期型より動きやすく、緊急時にも短時間で装着可能な新しい半剛体型宇宙服が2着搭載されました。

科学観測能力も強化されました。主要な観測機器として、BST-1Mマルチスペクトル望遠鏡が搭載されました。これは赤外線、紫外線、サブミリ波領域での天体観測が可能で、直径1.5メートルの反射鏡を持ち、極低温環境で運用されました。また、地球資源観測のためにMKF-6MマルチスペクトルカメラとKATE-140立体地形図カメラが搭載されました。これらのカメラは広範囲かつ高解像度での撮影能力を持ち、農業利用などの試験も行われました。さらに、20個の観測用ポートホールや、機材を宇宙に露出させたりごみを出したりできる2基の科学エアロックも装備されました。運用中にプログレス補給船で届けられたKRT-10電波望遠鏡は、後部ドッキングポートに取り付けられ、天文学や気象科学観測に用いられました。

サリュート6号の運用は1977年から1982年まで続きました。この期間中に5回の長期滞在ミッションと11回の短期訪問ミッションが行われました。特に長期滞在では、アメリカのスカイラブが持っていた当時の宇宙滞在記録（84日間）をサリュート6号の最初の長期滞在クルーが96日間で更新し、その後も記録は185日間まで伸ばされました。短期訪問ミッションには、インターコスモス計画の一環として、ワルシャワ条約機構加盟国などソ連以外の国の宇宙飛行士も多数参加しました。1978年に滞在したチェコスロバキアのウラジミル・レメックは、アメリカとソ連以外の国籍を持つ初の宇宙飛行士となりました。

サリュート6号への輸送は、主に有人のソユーズ宇宙船と無人のプログレス補給船によって行われました。ソユーズはクルー交代や緊急時の脱出に利用され、プログレスは食料、水、機材、燃料などの補給を担当しました。プログレスは後部ドッキングポートでのみ燃料補給が可能でした。運用末期には、実験的な大型補給宇宙機であるコスモス1267号（TKS）がドッキングしました。これは大型モジュールの自動ドッキング能力を実証し、将来の宇宙ステーション建設に不可欠な技術開発となりました。

サリュート7号の打ち上げ成功に伴い、サリュート6号はその役目を終え、打ち上げから約5年後の1982年7月29日に軌道から離脱し、大気圏に再突入して運用を終了しました。サリュート6号は、長期有人宇宙滞在、国際協力、そして後の宇宙ステーション技術の発展において、極めて重要な役割を果たした宇宙施設です。

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