オレゴン・カントリー

オレゴン・カントリーとは

オレゴン・カントリー（または単に「オレゴン」）は、かつて北米大陸の太平洋岸北西部に存在した地域を指す言葉です。現在のカナダのブリティッシュコロンビア州の一部と、アメリカ合衆国のオレゴン州、ワシントン州、アイダホ州の全域、そしてモンタナ州、ワイオミング州の一部を含んでいました。この地域は、北緯42度から北緯54度40分、ロッキー山脈から太平洋までの広大な範囲に広がっていました。

現在ではこの名称が使われることは稀ですが、19世紀前半には、アメリカ合衆国とイギリスが領有権を主張し、入植が進められた地域として重要な意味を持っていました。

オレゴン・カントリーの探検

1793年、アレグザンダー・マッケンジーが北米大陸を陸路で横断し、太平洋岸に到達しました。その後、1804年から1806年にかけて、ルイスとクラークによる探検隊がこの地を探検し、アメリカ合衆国による領有の根拠としました。また、イギリスの毛皮会社に所属していたデーヴィッド・トンプソンも、コロンビア川を遡り、この地域の探検に貢献しました。

「オレゴン」という名前の由来

「オレゴン」という名前の由来は定かではありません。有力な説としては、フランス人探検家がコロンビア川を「ouragan（嵐の川）」と呼んだことに由来するとされています。また、18世紀初期に出版されたフランス製の地図に「ウィスコンシン川」が誤って記載されたものが転訛したという説も存在します。

領有権を巡る争い

オレゴン・カントリーの領有権は、当初、アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ロシア、スペインが主張していました。しかし、18世紀後半から19世紀にかけて、各国は相次いで権利を放棄し、最終的にはアメリカ合衆国とイギリスの間で争われることになりました。

アメリカ合衆国は、ロバート・グレイによるコロンビア川の発見やルイス＝クラーク探検隊の探検を根拠に領有権を主張しました。一方、イギリスは、自国の探検や毛皮交易の実績を根拠としました。

1818年、アメリカ合衆国とイギリスは、ロッキー山脈から西の地域を「共同占有」することで合意しました。しかし、1840年代に入ると、アメリカ合衆国からの入植者が増加し、領有権を巡る対立が激化しました。

オレゴン条約の締結

1840年代初頭、一部のオレゴン住民が臨時の共和国を創設しました。アメリカ合衆国では、南部がテキサス併合を望み、北東部がオレゴン・カントリー全体の併合を望むなど、政治的な駆け引きがありました。

1846年、アメリカ合衆国とイギリスは、オレゴン条約を締結し、北緯49度線を境界線として領土を分割することで合意しました。この条約により、バンクーバー島はイギリス領となり、現在のブリティッシュコロンビア州とアメリカ合衆国の国境線が確定しました。

1848年、アメリカ合衆国はオレゴン・カントリーの南部をオレゴン準州として編入しました。その後、1859年にオレゴン州として合衆国に加盟しました。

初期の入植

ルイス＝クラーク探検隊の後、毛皮商人がロッキー山脈でビーバーの皮を求めて活動しました。彼らはインディアンの習慣を身につけ、インディアン女性と結婚する者もいました。また、ノースウェスト会社やハドソンズ・ベイ会社といったイギリスの毛皮会社も、この地域に進出し、毛皮交易を行いました。1811年には、ジョン・ジェイコブ・アスターがパシフィック毛皮会社を設立し、オレゴン・カントリーに交易所を建設しました。
1820年代には、アメリカ人がロッキー山脈を越えてこの地に移住し始め、1840年代にはオレゴン・トレイルを使った大規模な移住が始まりました。また、アメリカ合衆国東部の教会は、インディアンを改宗させるために宣教師を派遣しました。

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