オレステス・キンデラン

キューバの英雄、オレステス・キンデランの軌跡

オレステス・キンデラン・オリバレス。1964年11月1日生まれのキューバ出身の元プロ野球選手である。主に一塁手と外野手として活躍し、右投げ右打ちの強打者として知られた。

キンデランは、キューバ国内リーグ「セリエ・ナシオナル・デ・ベイスボル」で頭角を現した。若手時代はそれほど注目されていなかったものの、持ち前の打撃センスを磨き、1986-1987シーズンに17本塁打、1988-1989シーズンには24本塁打を放ち、本塁打王のタイトルを獲得するなど、着実に実力を付けていった。

キューバ代表として、キンデランはバルセロナ、アトランタ、シドニーと3大会連続でオリンピックに出場。チームの中軸打者として活躍し、2つの金メダルと1つの銀メダル獲得に大きく貢献した。その活躍は、キューバ野球界において伝説として語り継がれるものとなった。

キューバは共産主義国家であり、キューバの選手が海外のプロリーグでプレーすることは容易ではなかった。特にアメリカとの外交関係は良好ではなく、メジャーリーグでプレーするには亡命する必要があった。しかし、キンデランは「キューバのために戦う」という強い信念を持ち、亡命を拒否した。日本のプロ野球チームからも獲得のオファーがあったが、これも断っている。

しかし、アトランタオリンピック前後からキューバ政府の方針に変化が見られた。金銭的な利益を目的としない限り、海外でのプレーを容認するようになったのだ。キンデランは2002年、日本の社会人野球チームであるシダックスに入団。アントニオ・パチェコとともにチームに合流した。シダックスでの背番号は46番であった。

当時、シダックスの監督を務めていたのは、名将野村克也であった。野村監督はキンデランとパチェコの高齢（38歳）を理由に当初は「期待していない」と発言していたが、野村監督の指導を受けたキンデランは打撃が復活。豪快な打撃は健在であり、野村監督もキンデランを4番DHに据え、「打撃の中心」と評価するまでに至った。

2003年の都市対抗野球大会では、キンデランは全試合に4番打者として出場し、4本塁打を放つ活躍を見せた。外国人選手として初めて「久慈賞」（敢闘賞に相当）と「打撃賞」を受賞する快挙を達成した。

しかし、2004年オフ、キンデランは高齢による体力の衰えを理由に引退を表明。パチェコとともにキューバに帰国した。この年の後半には下半身の故障に苦しみ、満足に走ることさえ困難な状態であったという。

キンデランが在籍した2年間、シダックスは都市対抗野球東京第1代表の座を獲得していた。しかし、キンデランの引退後、2005年の東京2次予選で第2代表に終わっている。野村監督は「投打の柱が抜けたことでチームが小粒になった」と嘆いたという。キンデランのチームへの貢献度がいかに大きかったかを物語るエピソードである。

キンデランのキューバ国内リーグでの通算成績は、打率.313、出塁率.431、長打率.600、OPS1.031、1842試合出場、6488打数、2030安打、487本塁打、1511打点などである。本塁打数と打点数はリーグ歴代1位である。

オリンピックでは金メダル2個、銀メダル1個を獲得した他、ワールドカップでは金メダル5個を獲得。さらに、ワールドカップでは2度の首位打者を獲得している。これだけの輝かしい実績を残したキンデランは、キューバ野球界のみならず、世界野球史においても重要な存在である。彼の息子であるリオナール・キンデランも野球選手であり、2018年2月にはメジャーリーグ移籍を目指して亡命している。

キンデランの野球人生は、祖国への愛と揺るぎない信念、そして並外れた才能と努力によって彩られたものだったと言えるだろう。彼の伝説は、これからも多くの野球ファンを魅了し続けることだろう。

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