アントニオ・パチェコ

キューバ野球界の至宝：アントニオ・パチェコ・マッソの軌跡

アントニオ・パチェコ・マッソ。1964年6月4日生まれ、キューバ・サンティアーゴ・デ・クーバ州出身の元プロ野球選手である。内野手として22シーズンにわたりキューバ国内リーグで活躍し、類まれな打撃センスと卓越した守備力で、キューバ野球史に名を刻んだ人物だ。

キューバリーグでの華麗なるキャリア

1980年から2002年まで、アビスパス・デ・サンティアーゴ・デ・クーバに所属。キューバ代表チームでは主将として、オマール・リナレス、オレステス・キンデランらと共に強力なクリーンナップを形成した。1983年のパンアメリカン競技大会から代表入りし、以後2001年までの25の国際大会のうち実に11大会で打率4割以上を記録するなど、国際舞台でもその実力を遺憾なく発揮した。軽快なフットワークと正確な送球を武器とする二塁手として、数々の好守備で走者を刺し、チームに貢献した。

特に注目すべきは、長きに渡るキューバリーグでの活躍だ。2011年にエンリケ・エステバン・ディアスに破られるまで、通算2356安打という驚異的な記録を保持していた。この記録は、キューバ野球界における彼の圧倒的な存在感を示すものと言えるだろう。

日本の社会人野球での挑戦と転身

2002年、キンデランと共に日本の社会人野球チーム、シダックスに入団。名将・野村克也監督の下、再びクリーンナップの一角を担い、チームの打撃陣を牽引した。2003年の都市対抗野球大会では準優勝に貢献するなど、その実力は日本でも発揮された。しかし同年、アキレス腱断裂というアクシデントに見舞われ、その後は思うような活躍ができず、2004年に現役を引退。キューバに帰国した。

野村監督は、パチェコを「キンデランは天才肌だが、パチェコは頭脳派。野球をよく理解している選手で、将来はキューバ代表監督になるだろう」と評しており、その高い野球IQとリーダーシップを高く評価していたことが窺える。

指導者としての成功と新たな挑戦

現役引退後もキューバ野球界に貢献し続け、2004年から2011年まではアビスパス・デ・サンティアーゴ・デ・クーバの監督としてチームを率いた。その間、3度のリーグ優勝を果たすなど、指導者としても高い能力を示した。2008年には北京オリンピックのキューバ代表監督を務め、銀メダル獲得に貢献。

2014年にアメリカ合衆国に移住し、2015年にはニューヨーク・ヤンキース傘下のマイナーリーグチームのコーチに就任。その後もヤンキースの若手育成に携わり、指導者としてのキャリアを積んでいる。2023年現在もヤンキース傘下でコーチを務めている。

「The Captain of Captains」

キューバでは、その類まれなリーダーシップと勝負強さから「The Captain of Captains（主将の中の主将）」というニックネームで呼ばれるほど、国民から厚い信頼を寄せられていた。

パチェコ・マッソの野球人生は、キューバリーグでの輝かしい実績、日本の社会人野球での挑戦、そして指導者としての成功と、常に挑戦を続け、常に進化を遂げてきたことを物語っている。彼の功績は、これからもキューバ野球界、そして世界野球界に大きな影響を与え続けるだろう。

詳細情報

通算打撃成績：1853試合、7045打数、2356安打（歴代2位）、打率.334、366二塁打、63三塁打、284本塁打、1304打点（歴代3位）、出塁率.399、長打率.525、OPS.924、741四球、77敬遠、73死球、834三振、60盗塁、44盗塁死（キューバ国内リーグ、選抜リーグ含む、実働22年）

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