オレンブルク・ムスリム宗務局

オレンブルク・ムスリム宗務局の概要

オレンブルク・ムスリム宗務局は、1788年にロシアのエカチェリーナ2世によって設立された、国内で初めての公式なムスリム組織です。この宗務局は、ロシアのムスリムコミュニティに対して、宗教的および法的な監督を行うための機関として重要な役割を果たしました。

名称の由来

テリトリーがウファに設置されたため、当初は「ウファ・ムスリム宗務局」という名称でも呼ばれていましたが、多くの場合、その組織を指す際には「ムフティー局」という呼称が使われます。これは、宗務局の長であるムフティーに由来しています。

職掌と権限

オレンブルク・ムスリム宗務局は、ロシア帝国においてムスリム社会に対する多様な権限を有していました。具体的には、以下のような職務が含まれていました：

• - イスラム法の試験実施：宗教者に対して、イスラム法に関する知識を測る試験を行いました。
• - 宗教活動の監督：地域のムスリム活動を目でもって確認し、必要に応じて規制を行いました。
• - モスクの建設・修繕：新しいモスクの建設や既存のモスクの修繕に関する権限を持っていました。
• - 結婚・相続の裁定：ムスリムコミュニティにおける結婚や相続問題に関して、法的に裁定を下す役割を担いました。
• - ワクフの管理と紛争調停：慈善事業に関連する資産の管理や、宗教的な問題に伴う紛争を調停することも行いました。
• - 儀礼の実施と人籍簿の作成：1828年から、地域の儀礼を実施し、信者の記録を残す役目も担いました。

組織構成

この宗務局は、組織の長であるムフティーだけでなく、関連する宗教者によって構成されていました。それぞれの役職名は、実際のイスラム教における用法とは異なる場合が多く、注意が必要です。

ムフティー

ムフティーは宗務局のトップであり、一般的に5～6名のカーディーをはじめ、書記や通訳などの職員を抱えていました。ムフティーは任命制であり、カザン・タタール人の一般ムッラーから候補者が選ばれて、政府により承認されていました。歴代のムフティーには、ムハメドジャン・フサイノフやサリムガレイ・テヴケレフなどが名を連ねています。

ムフタスィブ

社会の名士から選ばれるムフタスィブは2～5名で、地域の信者を代表する役割を果たしました。

ムタワッリー

地域のムッラーやモスクの出納係の中から選ばれたムタワッリーも存在し、地域の儀礼や行事に関与しました。

管轄範囲と信徒の数

オレンブルク・ムスリム宗務局の管轄地域は広範囲にわたり、特にタヴリダ・ムスリム宗務局やザカフカス・ムスリム宗務局が管轄する区域を除くロシア全土を対象としていました。そのため、多くの信徒と宗教者がこの組織のもとで活動していたのです。

1889年の時点では、推定で300万から400万人の信徒と、約12,341名の宗教者が存在していました。地域の街区数も増加し、1912年には5771に達しました。このように、オレンブルク・ムスリム宗務局は当時のロシアにおける大きな存在感を示していました。

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