ムフタスィブ

ムフタスィブについて

ムフタスィブ（アラビア語: محتسب）は、イスラーム世界で市場や公共の秩序を監督する職業を指します。この概念は「ヒスバ」という語に由来し、善を勧め、悪を避けることに関連しています。日本では「市場監督官」と訳されることが多く、ムフタシブとも表記されることがあります。

役割と責任

ムフタスィブの主な任務は、バザールやスークと呼ばれる市場において、商品の質や価格を監視し、度量衡が正確であることを確認することです。また、不正行為の取り締まりや市場の秩序維持にも関わります。ムフタスィブは、公共の秩序を守ることにも寄与し、例えば公衆衛生を維持するためにハンセン病患者を隔離するなどの役割も担います。

任命基準

ムフタスィブに任命される人物には、いくつかの基準があります。特に、イスラーム法（シャリーア）に関する深い知識や、倫理的な徳を持っていることが求められます。また、慣行（ウルフ）についても精通している必要があります。これらの条件を満たすため、ムフタスィブには法学者や学識者であるウラマーが多く任じられていました。

歴史的背景

オスマン帝国においては、ムフタスィブの役割は特に重要視されました。この時代、ムフタスィブは法官であるカーディーの指導のもとで働き、商取引の監視や同業者組合であるエスナフとの関わりを持っていました。また、徴税請負を行うイルティザームという制度のもと、ムフタスィブは年間で任命されていました。

ムフタスィブは、各カーディーの管区に1名ずつ配置され、部下を雇って徴税を行いました。徴収した税金は、あらかじめ決められた額を国庫に納入し、残りは自らの俸給として受け取る仕組みでした。

部下の役割

オスマン帝国のムフタスィブには、コル・オーラヌという職もありました。コル・オーラヌは店舗を訪問して営業税を徴収し、その後金庫番を通じて国庫に納入する仕事を担当しました。このように、ムフタスィブは単なる市場監督の役目を超え、行政や経済全般に関与していました。

まとめ

ムフタスィブという職業は、イスラーム社会における倫理や公共の秩序の維持に重要な役割を果たしてきました。商品取引の監視から公共衛生の管理まで、ムフタスィブは多岐にわたる責任を担っており、オスマン帝国時代には特に組織化された制度のもとで効果的に機能していたことがわかります。

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