オンズロー伯爵

オンズロー伯爵の歴史：代々続く栄光と変遷

オンズロー伯爵位は、イギリスの由緒ある世襲貴族爵位です。その起源は1801年に遡り、ホイッグ党の政治家であった第4代オンズロー男爵ジョージ・オンズローが、伯爵位を叙任されたことに始まります。しかし、オンズロー家の歴史は、この叙位よりもはるかに古く、ピューリタン革命以前からイギリス政治の中枢で活躍してきた家系の物語なのです。

その始まりは、アーサー・オンズロー（1624-1688）にまでさかのぼります。彼は王政復古後も長く下院議員を務めた人物であり、1674年には準男爵位を授与されました。彼の息子、リチャード・オンズロー（1654-1717）もまた下院議員として活躍し、1708年から1710年にかけては下院議長、1714年から1715年にかけては財務大臣を歴任しました。そして、1716年には男爵位に叙せられ、貴族院議員となりました。この男爵位は、特殊な継承規定が設けられており、爵位継承において、叔父とその男系子孫への継承も認められていました。

3代男爵リチャード・オンズローの死後、この特殊な継承規定によって、初代準男爵アーサー・オンズローの分家にあたるジョージ・オンズローが4代男爵を継承しました。ジョージは下院議員として活躍した後、1776年にクランリー男爵に叙せられ、同年中にオンズロー男爵位を継承。さらに1801年には、ついにオンズロー伯爵に叙任されたのです。この叙任によって、オンズロー家の歴史は新たな章を刻むこととなります。

初代伯爵の血縁者には、フランスで亡命生活を送った人物もいます。フランスの作曲家として知られるジョルジュ・オンスローは、初代伯爵の弟エドワード・オンズローの子孫にあたります。同性愛スキャンダルが原因でフランスへ亡命したという歴史は、伯爵家にとっても複雑な影を落とす出来事でした。

初代伯爵から数えて4代にあたるウィリアム・ヒラー・オンズロー（1853-1911）は保守党の政治家として活躍し、1889年から1892年にかけてニュージーランド総督を務めました。彼の後も、オンズロー家の当主たちは保守党の政治家として、陸軍省政務次官や支払長官などの要職を歴任。6代当主ウィリアム・アーサー・バンプフィルド・オンズローは、貴族院与党副幹事長を務めるなど、政治的影響力を維持し続けました。

1999年の貴族院改革で世襲貴族の議席が大幅に削減された後も、7代当主マイケル・ウィリアム・コプルストン・ディロン・オンズローは貴族院議員の座を維持し、オンズロー家の伝統は現在も受け継がれています。現在の当主は8代当主ルパート・チャールズ・ウィリアム・ブラード・オンズローです。オンズロー家の本邸はサリー州にあるクラレンドン・パーク・ハウスであり、その家訓は「ゆっくり急げ (Festina Lente)」です。これは、家名「On-slow」にかけた洒落として知られています。

現当主は、オンズロー伯爵位以外にも、クランリー子爵位、オンズロー男爵位、クランリー男爵位、そしてオンズロー準男爵位を保有しており、その歴史と伝統の重みを象徴しています。オンズロー家の系譜は、長きにわたるイギリス政治への貢献と、数々の栄光、そして複雑な歴史を物語る、興味深い記録として残されています。

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