オンセンミズゴマツボ

オンセンミズゴマツボ（Stenothyra thermaecola）

オンセンミズゴマツボは、ミズゴマツボ科に属する小型の淡水貝で、日本特有の種です。この貝は主に大分県の由布市に存在し、その生息環境や特性から特異な存在として知られています。

形態的特徴

全長約4mm、直径約2.5mmという小さなサイズで、金色の殻を持つのが特徴です。この貝の殻表には点刻列がなく、外見からもはっきりと判断できます。主な食物はコケであり、これを取りながら生活しています。

生息環境

オンセンミズゴマツボは、温度36-45℃前後の温水域を好むため、温泉が流入するような特別な水路に生息しています。海においては、高温環境で生活する貝類が確認されていますが、陸上の温泉に生息する貝はこの種のみとされ、環境が極めて特異であることがわかります。温泉の水に依存する貝類で、同じような生態系を持つ生物は少ないため、その存在は非常に貴重です。

分布状況

現在、オンセンミズゴマツボは大分県由布市にある由布院温泉の金鱗湖近くの水路および別府市の亀川でのみ確認されています。過去には玖珠郡九重町にあたる宝泉寺温泉に生息していたこともありますが、1960年代末から生息地が消失してしまいました。しかし、2022年には亀川で久々にその存在が確認され、60年ぶりの再発見となりました。

保全状況

この貝は絶滅危惧I類（CR+EN）に分類されており、環境省のレッドリストに登録されています。また、大分県のレッドデータブックにもその危機的状況に応じて絶滅危惧IA類として記載されています。2010年3月31日には大分県の指定希少野生動植物に指定され、2013年9月7日には由布市の指定文化財にも認定されました。

生息地は観光名所であるため、貝の生息数は限られ、絶滅リスクが高い状態にあります。由布市では、貴重な生物であるため、生息域外保全を強化しています。また、かつて存在した旧銀鱗湖への移植を目指し、飼育実験が行われていることも注目されています。これにより、現在の生息地以外でも彼らを保護し、生存数を増やそうとする取り組みが進められています。

このように、オンセンミズゴマツボは独特な生態と環境条件を持つ貝類であり、その存在が脅かされる中、保全活動が急務となっています。私たちの環境や生態系を理解し、保護へのアプローチを考えることが求められています。

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