オン・ツアー・ウィズ・エリック・クラプトン

アメリカの夫婦デュオ、デラニー＆ボニーが中心となり、豪華なミュージシャンたちと共に作り上げたライブアルバム『オン・ツアー・ウィズ・エリック・クラプトン』は、『デラニー＆ボニー＆フレンズ』名義で1970年に発表されました。この作品は、そのタイトルが示す通り、著名なギタリストであるエリック・クラプトンがバンドに帯同したヨーロッパツアーの模様を収めた貴重な記録です。特に注目すべき点は、このツアーに参加していたボビー・ウィットロック（オルガン、ボーカル）、カール・レイドル（ベース）、ジム・ゴードン（ドラムス）といったメンバーが、後にクラプトンと共にロック史に名を刻む伝説的なバンド、デレク・アンド・ザ・ドミノスを結成する礎となったことです。

デラニー＆ボニーとエリック・クラプトンとの関係は、1969年に始まります。当時、クラプトンが所属していたスーパーグループ、ブラインド・フェイスのアメリカツアーにおいて、デラニー＆ボニーがオープニングアクトを務めたことがきっかけでした。クラプトンは彼らのソウルフルな音楽に深く感銘を受け、ブラインド・フェイスの解散後、本格的にデラニー＆ボニーとの活動に身を投じることを決意します。クラプトンが参加したこの強力なラインナップで、彼らはヨーロッパ各地を巡るツアーを敢行しました。本作に収録されている音源は、そのツアーの中から、特にイギリスのクロイドンにある会場で収録された熱演が中心となっています。

このアルバムには、デラニー＆ボニーの持ち味であるゴスペルやソウル、ブルースの要素が混じり合ったサウンドが、クラプトンをはじめとする凄腕ミュージシャンたちの演奏によって一層輝きを増しています。収録曲の中には、ブルースの巨人ロバート・ジョンソンに捧げられたメドレー「プアー・イライジャ〜トリビュート・トゥ・ジョンソン」のように、ルーツミュージックへの敬愛を示す楽曲も含まれています。また、クラプトンと共にギタリストとして参加したデイヴ・メイソンが提供した楽曲「オンリー・ユー・ノウ・アンド・アイ・ノウ」も収録されており、この曲は後にメイソン自身のソロアルバム『アローン・トゥゲザー』（1970年）にも収められています。さらに、アルバムのリリースに先行してシングルカットされたスタジオ録音版の「カミン・ホーム」は、全米84位、全英16位とヒットを記録し、アルバムへの期待感を高めました。

このツアーとアルバムに参加したミュージシャンは非常に豪華な顔ぶれでした。中心であるデラニー・ブラムレット（ボーカル、リズムギター）とボニー・ブラムレット（ボーカル）に加え、前述のエリック・クラプトン（リードギター）、デイヴ・メイソン（ギター）という二人の名ギタリストが揃い踏み。リズム隊は、後にデレク・アンド・ザ・ドミノスでクラプトンを支えるボビー・ウィットロック（オルガン、ボーカル）、カール・レイドル（ベース）、ジム・ゴードン（ドラムス）が務めました。さらに、ブラスセクションとしてジム・プライス（トランペット、トロンボーン）とボビー・キーズ（サックス）、パーカッションにテックス・ジョンソン（コンガ、ボンゴ）、そしてバッキングボーカルにはリタ・クーリッジが参加するなど、まさに「フレンズ」の名にふさわしい強力な布陣でした。

商業的な面でも、『オン・ツアー・ウィズ・エリック・クラプトン』はデラニー＆ボニーにとって大きな成功を収めました。アメリカの主要なアルバムチャートであるBillboard 200では、グループの作品として唯一トップ40入りを果たし、最高位29位を記録しました。これは、彼らのディスコグラフィにおいて最大のヒットアルバムとなりました。本作は、デラニー＆ボニーのソウルフルな音楽性と、それを増幅させる一流ミュージシャンたちのライブパフォーマンスが見事に融合した作品であり、特にクラプトンがデレク・アンド・ザ・ドミノスのサウンドへと向かう過渡期を捉えた、音楽史においても重要な意味を持つライブアルバムと言えるでしょう。

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