ボビー・キーズ

ボビー・キーズ：ローリング・ストーンズの魂のサックスマン

ボビー・キーズ（1943年12月18日 - 2014年12月2日）は、アメリカ合衆国テキサス州出身の卓越したサックス奏者であり、ローリング・ストーンズ（以下、ストーンズ）のツアーメンバーとして世界的に知られています。10代の頃からプロとして活躍を始め、幅広いミュージシャンとの共演、そしてストーンズとの長く複雑な関係を通じて、ロック音楽史に名を刻む存在となりました。

幼少期からストーンズとの出会い

幼少期より類まれなサックスの才能を発揮したボビーは、15、6歳で既にバディ・ホリーのバックバンドで演奏するなど、若くしてプロとしてのキャリアをスタートさせました。その後、数々のバンドを渡り歩き、レオン・ラッセルやデラニー&ボニーらとの共演を経て、1960年代にストーンズのメンバーと出会い、1969年のアルバム『レット・イット・ブリード』で初めてストーンズの作品に参加しました。

ストーンズとの黄金時代と波乱

1970年代には数々のストーンズのアルバムレコーディングに参加し、1972年から73年のツアーでは正式なサポートメンバーとなりました。しかし、ツアー中のフランスでの出来事が、彼とストーンズの関係に影を落とします。ホテルの浴槽をドンペリニヨンで満たし、風俗嬢を招いたという伝説的なエピソードは、一時的に彼をストーンズから遠ざける結果となりました。この事件後、ボビーはアルコールやドラッグの影響を認めており、この時期、ライブにおける「ブラウン・シュガー」でのサックスソロはギターソロに変更されました。

「ブラウン・シュガー」での伝説的ソロ

ボビー・キーズの名前を世界に知らしめたのは、ストーンズの代表曲「ブラウン・シュガー」での圧倒的なサックスソロです。間奏の演奏を巡る議論の中で、ボビーが自らの熱意でソロに挑戦し、その数音符で聴衆を魅了しました。その才能は「スティッキー・フィンガーズ」収録の「キャン・ユー・ヒア・ミー・ノッキング」でも発揮され、本来短いボーカルパートであった部分が、ボビーのソロによって長いジャムセッションへと拡張されたほどです。この曲は長らくライブでは演奏されませんでしたが、ストーンズ結成40周年ツアーで復活し、大きな話題となりました。

ストーンズとの再会と最後のステージ

ストーンズが対人関係の悪化による解散危機を乗り越えた後、ボビーは再びストーンズのツアーメンバーとして復帰しました。1979年のニュー・バーバリアンズでの活動や、キース・リチャーズのソロツアーへの参加など、ストーンズのメンバーとは常に良好な関係を維持しており、特にキース・リチャーズとは生年月日が同じという縁もあり、深い信頼関係を築いていました。キースはボビーをバンドに復帰させるために、リハーサル中にこっそりソロを演奏させ、ミック・ジャガーを驚かせたという逸話も残っています。ボビーの復帰後は「ブラウン・シュガー」や「ミス・ユー」などでのサックスソロが、ストーンズのライブの大きな魅力となりました。2012年から2014年にかけて行われたツアーにも参加しましたが、体調不良のためオセアニア公演には参加できませんでした。

多くのミュージシャンとの共演

ストーンズ以外にも、ジョン・レノン、エリック・クラプトン、ジョージ・ハリスン、ザ・フーといった、ロック界の巨匠たちと共演したボビー。その幅広い音楽性と卓越した演奏技術は、多くのミュージシャンから高く評価され、敬愛されていました。キース・リチャーズはボビーについて、「ギターバンドであるストーンズのサウンドに、自分の才能を完璧に溶け込ませる素晴らしい才能を持っていた」と称賛しています。

晩年と死

2014年12月2日、テネシー州フランクリンの自宅で肝臓がんで70歳で死去しました。ロック界の偉大なサックスマンの死は、世界中のファンに深い悲しみを与えました。しかし、彼の奏でた音色は、これからも多くの人の心に響き続けるでしょう。彼の音楽は、時代を超えて人々を魅了し続ける、永遠の遺産として残ります。

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