オン・ボード・ダイアグノーシス

OBD（On-Board Diagnostics）とは何か？

OBDとは、自動車の各部に搭載されたECU（Electronic Control Unit）に組み込まれた自己診断機能のことです。略称としてOBDが使われます。ECUは、エンジンの燃料噴射システムや点火システムなどの様々な制御を行います。OBDは、これらのシステムに異常が発生した場合、ドライバーに警告を表示することで安全運転を支援します。この警告表示は、MIL（Malfunction Indication Lamp）と呼ばれる警告灯を通して行われます。

OBDの歴史

OBDの歴史は、マイクロコンピュータが自動車のECUに採用され始めた1960年代後半に遡ります。当初は、LEDの点滅回数で故障箇所を特定する簡素なものでしたが、その後、技術の進歩とともに機能が向上し、標準化が進みました。

1968年頃: フォルクスワーゲンなどで、燃料噴射システムのECUにマイクロコンピュータが採用され始めます。
1970年: 日産が、マイクロコンピュータを使った燃料噴射＆点火制御システムECCSを搭載。簡単な自己診断機能を備えていました。
1980年: ゼネラルモーターズ（GM）が、組立ラインでのECU検査用データ通信システムALDLを開発。これがOBDの基礎となります。
1988年: 自動車技術者協会（SAE）が、診断コネクタと診断コードの標準化を勧告。
1991年: カリフォルニア州大気資源局（CARB）が、州内で販売される新車への自己診断機能搭載を義務化（OBD1）。
1996年: アメリカ合衆国で、乗用車と小型トラックへのOBD2搭載が義務化。
2001年、2004年: EUが、ガソリン車およびディーゼル車へのOBD2（EOBD）搭載を義務化。
2006年: 日本の国土交通省が、乗用車と小型トラックへのOBD2（JOBD）搭載を義務化。
2008年: アメリカ合衆国が、CAN規格（Controller Area Network）の採用を義務化。
2010年: 大型トラック向けのHDOBDの仕様が発表。

OBDとECUの通信規格

OBD1は各メーカーが独自に規格を定めていたため、互換性に課題がありました。OBD2は、共通のコネクタDLC（Data Link Coupler）と故障コードを採用することで、互換性の向上を実現しました。OBD2では、Kライン、CANなど複数の通信規格が使用されます。2008年以降の車両では、CAN規格が主流となっています。

OBD2の故障コード体系

OBD2の故障コードはDTC（Diagnostic Trouble Code）と呼ばれ、アルファベット1文字と4桁の数字で構成されます。Pコード（Power Train）、Cコード（Chassis）、Bコード（Body）、Uコード（CAN）の4種類があり、非常に詳細な故障情報が得られます。数字が0の場合は共通の意味を持ち、1または2の場合はメーカー独自のコードです。

OBD2スキャンツール

OBD2のDTCを読み取るには、スキャンツールが必要です。スキャンツールには、メーカー専用のもの、汎用高級タイプ、汎用ハンドヘルドタイプ、パソコンベースのタイプなどがあります。機能も価格も様々です。

主な機能: DTCの読み取りと消去、ライブデータ表示、アクティブテスト

DTCの読み取りと消去

スキャンツールを接続すると、ECUが記憶しているDTCが表示されます。DTCにしたがって修理を行い、その後DTCを消去します。再度エンジンを始動し、問題が解決したか確認します。

ライブデータ表示機能

ライブデータ表示機能は、センサーからの信号をリアルタイムで表示する機能です。エンジンの状態を詳細に把握するのに役立ちます。

アクティブテスト機能

アクティブテスト機能は、ECUにコマンドを送信し、車両の各機能をテストする機能です。例えば、パワーバランステストで失火しているシリンダーを特定できます。

OBD2スキャンツール使用上の注意点

スキャンツールを使用する際には、以下の点に注意が必要です。

いきなり部品交換をしない: DTCが表示された場合、すぐに部品交換せず、配線やコネクタ、ECU内部の異常なども確認する必要があります。
センサーの特性の狂いは検知できない: センサーの出力信号が規定値以内であれば、DTCは記憶されません。

OBDは、自動車の安全と整備の効率化に大きく貢献しています。この技術の理解を深めることで、より安全で快適なカーライフを送ることができるでしょう。

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