オーガスタス・パブロ

オーガスタス・パブロ：レゲエとダブの先駆者

オーガスタス・パブロ（Augustus Pablo、本名ホレス・スワビー Horace Swaby、1954年6月21日 - 1999年5月18日）は、ジャマイカ出身の音楽プロデューサーであり、キーボード奏者です。1970年代のルーツロックレゲエとダブのシーンで重要な役割を果たし、特にメロディカを本格的な音楽表現の手段として確立したことで知られています。

生い立ちと音楽との出会い

セント・アンドリュー教区で生まれたスワビーは、キングストン・カレッジ・スクールでオルガンを学びました。音楽好きの友人たちと学校の礼拝堂に忍び込み、オルガンの練習に励んでいたそうです。同級生には、後に音楽業界で重要な役割を果たすクライブ・チンがいました。クライブ・チンの家族は、ハーマン・チン・ロイやレスリー・コンといった、キングストンの音楽シーンに大きな影響力を持つチン一族でした。

プロとしてのキャリアの始まり

ハーマン・チン・ロイは、キングストンで影響力のあるレコード店、アクエリアス・レコーズのオーナーでした。スワビーのメロディカの才能に気づいたハーマン・チン・ロイは、クライブ・チンの父親であるビンセント・"ランディ"・チンのレコーディングスタジオ「ランディーズ」で、彼に『Iggy Iggy』をレコーディングする機会を与えました。この時、彼は「オーガスタス・パブロ」という名前を使用しました。元々「オーガスタス・パブロ」は、ハーマン・チン・ロイがキーボーディストを起用する際に使用していた名前であり、特定の人物を指すものではありませんでした。チンはスワビーにその「パブロ」の名を与えたのです。

その後、パブロはマイキー・チャンのバンド「ナウ・ジェネレーション」に参加し、クライブ・チンやその仲間と共にキーボードを演奏しました。また、プロデューサーとしての活動も開始しました。パブロとチンは『Java』（1972年）をレコーディングし、その後ナウ・ジェネレーションを脱退したパブロは、スタジオを使うことができたクライブと共に、ソロとしての活動を始めました。彼はジョン・ホルトの大ヒット曲『My Desire』などを使用し、チンやレオナルド・チン、そしてリー・ペリーなどの様々な音楽家と共にレコーディングを行いました。

ロッカーズ・レーベルの設立と成功

パブロは、ホット・スタッフ、メッセージ、ロッカーズなどのレーベルを設立し、知名度の高い曲のインストゥルメンタルバージョンをリリースし続けました。これらのインストゥルメンタルは、主にスタジオ・ワンの古いヒット曲のバージョンでした。ロッカーズレーベルが成功したにもかかわらず、1973年にはクライブ・チン、パット・チンと共にアルバム『This is Augustus Pablo』（1974年）をレコーディングしました。

また、伝説的なエンジニア、キング・タビーとの共同作業による『Ital Dub』（1974年）をリリースし、高い評価を得ました。

1970年代後半の黄金期

1970年代後半、パブロはフレッド・ロックスの『Black Star Liner』など、数々のヒット曲をプロデュースし続けました。彼はDillinger、Norris Reid、Ricky Grant、Delroy Williams、Junior Delgado、ホレス・アンディ、Freddy McKayなど、様々なアーティストと共同で制作を行いました。この時期には、『King Tubby Meets Rockers Uptown』（1976年）やヒュー・マンデルの『Africa Must Be Free By 1983』（1978年）など、彼のキャリアにおける重要な作品が数多く生まれました。

ファーイースト・サウンドの確立

いくつかのシングルをリリースした後、パブロはジャマイカのサウンドとアジア風のサウンドを融合させたアルバム『East of the River Nile』を発表しました。この作品に代表されるパブロ独自の音楽スタイルは「ファーイースト・サウンド」と形容され、彼の代名詞となりました。また、彼はレゲエにおけるメロディカの使用を広く知らしめました。

1980年代以降の活動

1980年代に入ると、パブロの活動は落ち着きを見せましたが、アメリカでの評価は高まりました。『Rising Sun』（1986年）をリリースし、高い評価と商業的な成功を収めました。また、『Ragamuffin Year』（Junior Delgado）、『Humble Yourself』（Asher & Tremble）、『Far Far Away』（Ricky Grant）などのヒット曲もプロデュースしました。さらに、彼は世界中をツアーし、1987年には東京でのライブアルバムも制作しました。同年、『Night & Day』（Dawn Penn）、『Jah Made Them All』（Yami Bolo）などを含むアルバムのシリーズをリリースしました。

死去

パブロは肺の虚脱が原因で、1999年5月18日にキングストンのユニバーシティ・ホスピタルで亡くなりました。晩年は重症筋無力症に苦しんでいたそうです。

オーガスタス・パブロは、その革新的な音楽性とメロディカの演奏を通じて、レゲエとダブの発展に大きく貢献しました。彼の音楽は、今もなお多くの人々に愛され続けています。

主要ディスコグラフィー

This Is Augustus Pablo (1973)
Ital Dub (1974)
King Tubby Meets Rockers Uptown (1976)
East of the River Nile (1978)
Original Rockers (1979)
Rockers Meets King Tubby in a Firehouse (1981)
* Rising Sun (1986)

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