キング・タビー

キング・タビー：ダブの創始者、その革新的な音楽キャリア

キング・タビー（King Tubby、本名オズボーン・ラドック）は、ダブという音楽ジャンルの創始者として、音楽史にその名を刻んでいます。1941年にジャマイカで生まれた彼は、サウンドエンジニア、音楽プロデューサーとして、1960年代から1970年代にかけてのダブの発展に多大な影響を与えました。

サウンドシステムから始まった音楽キャリア

キング・タビーの音楽キャリアは、1950年代のキングストンのサウンドシステムから始まりました。彼は卓越したラジオ修理技術を持っており、その腕を買われて多くのサウンドシステムから重宝されました。カリブ海の熱帯気候は機材の故障を引き起こしやすく、彼の技術は必要不可欠だったのです。機材の修理だけでなく、彼は独自の機材を開発・製作し、当時のジャマイカの機材の3分の2は彼が作ったものだと言われています。

1958年、彼は自身のサウンドシステム「ホームタウン・ハイファイ」を運営するようになります。1961年から1962年には海賊放送局で音楽を流していましたが、警察の捜査により閉鎖を余儀なくされました。当時、サウンドシステムはデューク・リードとコクソン・ドッドの二強時代でしたが、彼は既に自身のサウンドシステムでエコーやリバーブなどの効果を実験的に使用していました。

ダブ誕生のきっかけ

1968年、キング・タビーはプロデューサーのデューク・リードの下で、原盤のカッティング技師として働き始めます。デューク・リードは、ジャマイカ初のレコーディングスタジオであるトレジャー・アイル・スタジオの経営者であり、スカ、ロックステディ、レゲエの主要なプロデューサーでした。

ある時、デューク・リードから、サウンドシステムでDJがトースト（曲に合わせてシャウトすること）をするために、歌入りのヒット曲からインストゥルメンタル・トラックを作るように依頼されます。2トラックのテープを操作する中で、彼は様々な音響効果を加え、全く新しいバージョンを作り出すことを発見しました。彼はカットイン・カットアウトを施したアセテート盤を制作し、自身のサウンドシステムでかけたところ、専属DJのU・ロイが歌なしのトラックに合わせてトーストするスタイルが観客に大いに受けました。これがダブ誕生の瞬間でした。

キング・タビーズ・スタジオの設立とダブの発展

1970年代に入ると、キング・タビーは自身のスタジオ「キング・タビーズ」を設立します。プロデューサーのバニー・リーと共に、アグロベーターズ（後のスライ&ロビーが在籍）をハウスバンドに迎え、数々のダブ作品を制作しました。彼のスタジオは、原始的な2トラック、または4トラックのミキシング機材しかありませんでしたが、彼は手に入る限りのエフェクターに電気的な加工を施し、独自のサウンドを追求しました。1972年から1974年の間には、リー・ペリーやオーガスタス・パブロといったプロデューサーもキング・タビーと協働し、数多くのダブ作品が録音されました。

後進の育成と突然の死

1970年代後半、キング・タビーは第一線から退き、フィリップ・スマート、プリンス・ジャミー（後のキング・ジャミー）、サイエンティストなど、若い世代のエンジニアを育成しました。その後、彼はレコーディングの現場に復帰し、ファイヤーハウス・レーベルを立ち上げてダンスホール期にも積極的に対応しましたが、1989年2月6日、自宅の外で何者かに銃撃され、命を落としました。彼はウォーターハウススタジオでのセッションからの帰宅途中でした。

キング・タビーの死は、ジャマイカ音楽界にとって大きな損失でした。彼の革新的な音楽性と技術は、ダブというジャンルを確立し、後の音楽シーンに多大な影響を与えました。彼の作品は、今もなお世界中の音楽ファンを魅了し続けています。

ディスコグラフィー（一部）

King Tubby/ROOTS OF DUB
Augustus Pablo/King Tubbys Meets Rockers Uptown
Lee Perry and the Upsetters/BLACKBOARD JUNGLE DUB

関連項目

ピーター・トッシュ
* ダブ

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