オースティン・アダムス (1991年生の投手)

オースティン・アダムス：数奇な投手人生と驚異の記録

オースティン・ランス・アダムスは、1991年5月5日、フロリダ州タンパ生まれのアメリカ人プロ野球選手です。右投げ右打ちの投手として、現在オークランド・アスレチックスに所属しています。

彼のMLBキャリアは、2012年、ロサンゼルス・エンゼルスからドラフト8巡目で指名されたことに始まります。その後、エンゼルスのマイナーリーグ傘下で着実に経験を積み重ねていきました。パイオニアリーグ、A級、A+級、AA級、そしてAAA級と、段階を踏んでレベルアップを遂げ、各段階で安定した投球を披露しました。マイナーリーグでの成績は決して華々しいものではありませんでしたが、着実に経験値を高めていったと言えるでしょう。

2016年にはルール・ファイブ・ドラフトを回避するためにエンゼルスの40人枠入りを果たしましたが、同年、トレードによってワシントン・ナショナルズに移籍します。ナショナルズでは2017年にメジャーデビューを果たし、以降、マリナーズ、パドレス、ダイヤモンドバックスとチームを渡り歩きます。

彼のMLBでのキャリアは、決して順風満帆ではありませんでした。メジャーでの登板数は必ずしも多くなく、マイナーリーグでのプレー期間が長かったと言えるでしょう。しかし、2021年シーズンに、彼はMLBの歴史に名を刻む偉業を達成することになります。

2021年9月17日、セントルイス・カージナルス戦で、ヤディアー・モリーナ捕手にシーズン24個目の死球を与えました。これは、1920年以降のメジャーリーグにおけるシーズン最多与死球記録であり、実に99年ぶりに更新された記録でした。

この記録は、単に与死球の数が多いというだけでなく、その投球回数の少なさからも大きな意味を持ちます。アダムスはわずか52イニング2/3でこの記録を達成したのに対し、それまでの記録保持者であるハワード・アームキーは279イニング2/3を投げていました。このことから、アダムスの与死球の割合がいかに高かったかがわかります。

また、この記録はナショナルリーグ記録であるだけでなく、20世紀以降のアメリーグ記録である32個（チック・フレーザー）をも下回るものではありませんでした。この記録は、アダムスの投球スタイルと密接に関連していると言えるでしょう。

アダムスの投球スタイルは、彼の武器であるスライダーと速球が中心です。特にスライダーは、2021年には838球も投げられ、被打率.145と非常に効果的でした。しかし、このスライダーのコントロールの難しさこそが、彼が多数の与死球を記録した原因と言えるかもしれません。

2022年は怪我の影響によりわずか2試合の登板に留まり、その後、FAを経て2023年にはアリゾナ・ダイヤモンドバックスとマイナー契約を結びましたが、同年8月には右足首を骨折しシーズンを終えています。そして2024年、オークランド・アスレチックスへの移籍を果たしました。

オースティン・アダムスは、決して安定したキャリアを送ってきたとは言えませんが、その特異な投球スタイルと、MLBの歴史に名を刻む記録によって、多くのファンから記憶される投手であると言えるでしょう。今後の活躍にも期待がかかります。

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