オーストラリアの経済

オーストラリア経済：資源とサービス業が織りなすダイナミックな市場

オーストラリアは、世界第13位（GDPベース）、世界第17位（購買力平価ベース）の経済規模を誇る、高度に発達した市場経済国家です。世界経済に1.7%貢献し、活発な貿易活動も特徴で、世界第19位の輸出入国にランクインしています。アジア太平洋経済協力（APEC）、G20、OECD、WTOといった国際機関に加盟し、米国、ASEAN諸国などとの自由貿易協定も締結しています。特にニュージーランドとの緊密な経済連携は、将来的なオーストラシアン経済市場創出へと向かっています。

経済構造：サービス業の優位性と資源輸出の支柱

オーストラリア経済の大きな特徴は、GDPの約68%をサービス業が占める一方で、農業と工業セクターが輸出額の57%を担っている点です。観光、教育、金融といったサービス業は、ここ10年間で著しい成長を遂げ、国内生産の69%を占めるまでに至りました。しかし、この成長は第二次産業の縮小を伴っており、かつてGDPの15%を占めていた製造業は、現在では12%程度に減少しています。

一方、石炭や鉄鉱石などの豊富な天然資源は、オーストラリア経済の重要な支柱です。農業（小麦、羊毛など）や鉱業（鉄鉱石、金、天然ガス、石炭など）からの一次産品輸出が貿易収支を大きく支え、主要輸出相手国は日本、中国、韓国、インド、米国などとなっています。石油や石油製品については、80%程度を輸入に依存しているのが現状です。オーストラリア・ドルは、オーストラリア国内だけでなく、キリバス、ナウル、ツバルなどの太平洋島嶼国でも広く流通しています。

主要産業：資源、サービス、そして金融

第一次産業：オーストラリア経済の輸出を牽引するのは、農業と鉱業です。小麦、大麦、燕麦、羊毛といった農産物と、石炭、鉄鉱石、天然ガス、ウランといった鉱物資源の生産量は世界的に見ても上位に位置しています。BHPグループやリオ・ティントといった世界的な資源メジャー企業がオーストラリアに拠点を置くのも、こうした資源の豊富さを反映しています。

第二次産業：主要先進国とは異なり、オーストラリアは自国市場の小ささから、製造業の育成に積極的ではありませんでした。1990年代以降、輸入関税の引き下げや新興国での生産コストの低廉化などを背景に、多くの自動車メーカーがオーストラリアから撤退しました。2017年には、国内での自動車生産が完全に終了する事態となっています。

第三次産業：金融業はオーストラリア経済の重要な部分を占めています。オーストラリア証券取引所（ASX）はオセアニア最大の株式市場であり、BHPビリトン、リオ・ティント、ニューズ・コープといったグローバル企業が上場しています。オーストラリア・ニュージーランド銀行、コモンウェルス銀行、ナショナルオーストラリア銀行、ウエストパック銀行といった四大銀行も、世界的な規模を誇ります。不動産市場も活況を呈していますが、近年は外国資本による投資増加が住宅価格の高騰を招き、社会問題となっています。

経済の変遷と課題

1980年代以降、オーストラリアは経済の民営化を進め、オーストラリア・ドルの変動相場制への移行や金融の自由化などを断行しました。2000年代には、物品税の導入と所得税の引き下げにより貯蓄率向上を目指しました。

しかし、資源価格の高騰を背景とした「オランダ病」的な現象も顕著です。資源価格の上昇が為替レート上昇と労働コストの高騰を引き起こし、製造業の衰退を招いたのです。近年は中国経済の減速や資源価格の下落、環境規制の強化なども、オーストラリア経済の課題となっています。持続可能な経済成長に向けて、資源依存からの脱却や産業構造の多様化が求められています。

結論

オーストラリア経済は、資源の恵みと活発なサービス業を基盤とした、ダイナミックな経済です。しかし、資源価格の変動リスクや製造業の空洞化、環境問題など、多くの課題を抱えています。これらの課題を克服し、持続可能な成長を実現していくためには、経済構造の多様化と、イノベーションを促進する政策が必要不可欠です。

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