オーストラリア南極領土

オーストラリア南極領土（AAT）は、南極大陸の広大な地域を占めるオーストラリアの領有権主張地域です。イギリスが1841年から領有権を主張し始め、1933年にオーストラリア連邦に移管されました。その面積は、南極大陸における国家による領有権主張地域としては最大で、およそ589万平方キロメートルに及ぶと推定されています。

しかし、1961年に発効した南極条約によって、南極における領土主権の主張は凍結されました。南極条約第四条では、条約の規定が既存の領土主張を損なうものではないものの、領土主権の承認や非承認とは関係がないと定められています。このため、オーストラリアの南極領土に対する領有権主張を認める国は限られています。イギリス、フランス、ニュージーランド、ノルウェーの4ヶ国のみがオーストラリアの主張を認めています。

歴史を紐解くと、イギリスは1841年にヴィクトリアランド、1930年にはエンダービーランドの領有権を主張しました。その後、オーストラリアの探検家による調査を経て、1933年のイギリスの南極探検隊の調査結果を受け、オーストラリアが領有権を主張。イギリスの承認を経て、1936年には正式にオーストラリアの領土となりました。1938年にはフランスとの境界調整が行われ、現在に至ります。

オーストラリア南極領土は、アデリーランドを除く南緯60度以南、東経45度から160度までの範囲の島嶼部と陸地を含みます。西はドロンニング・モード・ランド、東はロス海属領と接しています。この地域には、オーストラリア南極局が管理する3つの通年観測基地（モーソン基地、デービス基地、ケーシー基地）があり、科学調査などが行われています。基地には研究者や支援要員などが常駐しています。

オーストラリアは、オーストラリア南極領土の沖合200海里を領海と主張しており、これを排他的経済水域（EEZ）としています。しかし、オーストラリアの南極における領有権主張は国際的に認められていないため、多くの国から反発を受けています。これは南極条約第四条に抵触する可能性があり、国際法上の論争となっています。

また、オーストラリア南極領海における捕鯨問題も、国際的な注目を集めています。反捕鯨団体シーシェパードの活動が活発で、日本の調査捕鯨船としばしば衝突しています。オーストラリア政府は反捕鯨法を制定していますが、その適用範囲については、オーストラリアの南極領土に関する主権主張が一部の国にしか承認されていないため、複雑な問題となっています。日本は、オーストラリア南極領海の存在自体を承認していません。

オーストラリア南極領土は、地理的な広大さと、複雑な歴史と国際関係によって特徴づけられる、重要な地域です。科学調査の拠点であると同時に、領土問題や資源管理、環境保全など、多様な国際問題が絡み合う場所となっています。今後とも、その存在は国際社会における重要な議論のテーマとなるでしょう。

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