オーストラリア諸語

オーストラリア諸語は、オーストラリア大陸とその周辺の島々でアボリジニによって話されてきた約200の言語の総称です。これらの言語は単一の語族を形成するわけではなく、数十もの関連性が不明瞭な語族から成り立っています。

かつては600～750もの言語が存在したと推定されていますが、現在話されているのは200程度に減少しました。17万人ほどのアボリジニ人口のうち、母語話者は約4万7千人と推定され、その多くは北部準州内陸部に集中しています。話者数が1000人を超える言語は、パマ・ニュンガン語族のアリャワラ語、アランダ語、カラ・ラガウ・ヤ語、ンガーニャチャラ語、ピチャンチャチャラ語、ワルマジャリ語、ワルピリ語、孤立言語のティウィ語、グンウィングアン語族のエニンディリャグワ語、グンウィング語など、ごく僅かです。それ以外の多くの言語は、高齢者数名しか話せる人が残っていない状況です。

パマ・ニュンガン語族の言語話者が多いのは、北部準州以外での話者数の減少が著しかったことによるものです。

オーストラリア諸語の多くは膠着語であり、能格言語であることが知られています。また、2進数または3進数の数詞を持つ言語が多く見られます。そのため、アボリジニは3より大きな数を数えられないという誤解が流布していますが、これは事実ではありません。

オーストラリア諸語の分類は、語族、語派、語群の3段階で行われます。主な語族には、ブナバン語族、デイリー語族、ダーウィン地域語族、ガラワン語族、グンウィングアン語族、イワイジャン語族、ジャラカン語族、ミリンディ語族、ニュルニュラン語族、パマ・ニュンガン語族、ティウィ語、ウォロラン語族などがあります。

パマ・ニュンガン語族は最大の語族であり、約160の言語が含まれます。この語族には、アランダ語、カラ・ラガウ・ヤ語、ワルピリ語、ンガーニャチャラ語、ピチャンチャチャラ語、グリンジ語など、現在比較的多くの話者を持つ言語が含まれています。しかし、これらの言語においても、話者数の減少は大きな問題となっています。

消滅したタスマニア諸語は資料が乏しく、オーストラリア諸語との関係は明確ではありません。音韻論的な特徴などから、タスマニア諸語、パプア諸語、大アンダマン語族と合わせてインド・太平洋大語族を形成するという説も存在します。

オーストラリア諸語の研究は、言語学、人類学、歴史学など多様な分野に貢献する重要な課題です。話者数の減少という深刻な状況の中、これらの言語の保護と継承に向けた取り組みが急務となっています。

参考文献

角田太作 (1988)「オーストラリア原住民語」『言語学大辞典』第1巻世界言語編上：. 三省堂.
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Dixon, R. M. W. (1980) The languages of Australia. Cambridge: Cambridge University Press.
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