オーストリアン・オーディオ

オーストリアン・オーディオ

オーストリアン・オーディオ（Austrian Audio）は、音響機器の設計・製造を手がけるオーストリアの企業です。主にプロフェッショナル用途のマイクロフォンやヘッドフォンに特化しており、その活動拠点をオーストリアの首都ウィーンに置いています。この企業は2017年7月に設立されました。

その設立の背景には、同じ年に歴史あるAKGアコースティックスのウィーンオフィスが閉鎖されたという出来事があります。オーストリアン・オーディオは、このAKGウィーンオフィスに勤務していた元従業員たちによって立ち上げられました。

略歴

オーストリアン・オーディオの創業は、AKGアコースティックスのオーストリアにおける活動終了と密接に関わっています。AKGは元々、1947年にルドルフ・ゲリケ氏とエルンスト・プレス氏によってウィーンで設立された企業です。当初は映画館向けの技術製品、例えばスピーカーや映写機、露出計などを製造していましたが、事業範囲を徐々に広げ、自動車用ホーン、ドアインターホン、電話用カーボンマイクロフォンカプセル、さらにはヘッドフォンやクッションスピーカーなども手がけるようになりました。AKGアコースティックスは長らくオーストリア国内で製品を製造していましたが、製造コスト効率を考慮した結果、高級機種の一部をスロバキアへ、その他の製品の製造拠点を中華人民共和国へと移転させていきました。

1993年には、AKGアコースティックスは象徴的な価格である1シリングでハーマン・インターナショナル・インダストリーズに買収されました。その後、2016年末にはハーマン自身が韓国のサムスングループによって買収されることになります。このサムスンによる買収に続く動きとして、ハーマンは2017年半ばまでに、ウィーン市リージンクにある工場を含むAKGアコースティックスのオーストリア拠点を完全に閉鎖し、機能を移転することを発表しました。これにより、約130名の従業員が影響を受け、一部の従業員にはドイツやハンガリーなど、ハーマンの他の施設への異動が提案されました。結果として、AKGブランド自体はサムスングループ内のハーマン部門が保有するブランドとして存続することになったものの、製品開発の主要機能は東ヨーロッパにあるハーマンの他施設に移管されることになりました。

2017年以降の展開

2017年7月、AKGアコースティックスのオーストリア拠点が計画通り完全に閉鎖されたことを受け、その元従業員たちが中心となり、オーストリアン・オーディオが設立されました。創業メンバーは約22名で、彼らはAKGで長年培ってきた経営管理、音響工学、電気工学、計測試験、メカニカルデザイン、無線技術、ソフトウェア開発といった多岐にわたる専門知識を有していました。これらの経験と技術が、オーストリアン・オーディオの製品開発の基盤となりました。

設立から数年を経て、オーストリアン・オーディオは高品質なプロ用音響機器メーカーとしての地位を確立しましたが、2025年1月には新たな展開を迎えます。デンマークの音響機器メーカーであるDPAマイクロホンが、オーストリアン・オーディオの株式の半分を取得し、実質的に買収することを発表しました。しかし、この買収後もオーストリアン・オーディオは独立したブランドとして存続し、製品開発は引き続きウィーンで行われることが表明されています。

オーストリアン・オーディオの歩みは、AKGという音響技術の遺産を受け継ぎつつ、新たな形でプロフェッショナル向け音響市場に貢献していく姿勢を示しています。

外部リンク

Austrian Audio 公式ウェブサイト（英語）
Austrian Audio 日本語ポータルサイト（日本語）

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