オーストリア・シリング

オーストリア・シリング：歴史と概要

オーストリア・シリングは、オーストリアで1924年から1938年、そして1945年から1999年まで使用されていた通貨です。2002年、ユーロへの移行により、1ユーロ=13.7603シリングのレートで廃止されました。補助通貨単位としてグロッシェン（Groschen）があり、1シリングは100グロッシェンに相当しました。

シリングの歴史：混乱と安定

オーストリア・シリングの歴史は、政治的混乱と経済的変動を反映しています。第一次世界大戦後の1924年、オーストリア＝ハンガリー・クローネに代わる通貨として誕生しました。しかし、1938年のナチス・ドイツによる併合（アンシュルス）で一時的に廃止され、ライヒスマルクに交換されました。

第二次世界大戦後、1945年に連合軍によって再導入されました。この時点では、連合国軍が発行した紙幣が流通し、その後オーストリア国立銀行が独自の紙幣と硬貨の発行を開始しました。1947年には通貨改革が行われ、旧紙幣と新紙幣の交換が行われました。

1950年代には、1米ドル=26シリングの固定相場制が導入され、通貨の安定が図られました。しかし、1971年のブレトンウッズ体制崩壊後、シリングは複数の通貨によるバスケットと固定され、その後はドイツマルクに連動するようになりました。

1999年にはユーロがオーストリアの法定通貨となり、2002年にユーロへの完全移行が完了しました。これにより、シリングは歴史の舞台から退場しました。ただし、オーストリア国立銀行では、1945年以降に発行されたシリング紙幣と硬貨は現在もユーロに交換可能です。

硬貨：多様な材質とデザイン

シリング硬貨は、その歴史の中で様々な材質と額面で発行されました。旧シリング時代には、銅、白銅、銀製の硬貨が流通しました。新シリング時代には、アルミニウム、亜鉛、アルミニウム青銅などが使用され、額面も1グロッシェンから5シリングまで多岐に渡りました。

特に注目すべきは、1950年代後半に5シリング硬貨がアルミニウムから銀へと材質変更されたことです。これはオーストリア経済の成長を象徴する出来事でした。その後、経済情勢の変化とともに、銀製の硬貨が白銅製へと変更されていきました。ユーロ移行時には、10グロッシェン未満の硬貨はあまり流通していませんでした。

紙幣：時代を映すデザイン

シリング紙幣もまた、歴史的背景を反映したデザインを持っています。旧シリング時代には、オーストリア国立銀行が5、10、20、50、100、1000シリング紙幣を発行しました。

新シリング時代には、連合国軍とオーストリア国立銀行がそれぞれ紙幣を発行しました。通貨改革後も様々な額面の紙幣が発行され、時代とともにそのデザインや額面も変化していきました。1988年には、5000シリングという高額紙幣も登場しました。

ユーロへの移行とその後

シリングからユーロへの移行は、2002年2月28日に完了しました。シリングの硬貨と紙幣は回収され、ユーロに交換されました。オーストリア国立銀行では、現在も1945年以降のシリングをユーロに交換することが可能です。シリングの廃止は、オーストリアが欧州連合に完全に統合されたことを示す象徴的な出来事でした。

まとめ

オーストリア・シリングの歴史は、オーストリアの政治、経済、社会の変遷を反映したものです。混乱と安定、成長と変革を経て、ユーロへの移行という歴史的な転換期を迎えました。シリングは、その存在を通してオーストリアの歴史を刻み込み、現在でもオーストリア国立銀行において、その歴史を垣間見ることができます。

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