オーストリア国民党

オーストリア国民党 (ÖVP): 歴史、政策、そしてハプスブルク家との関係

オーストリア国民党(Österreichische Volkspartei, ÖVP)は、オーストリアにおける主要な中道右派政党です。キリスト教民主主義と保守主義を基盤とし、長年にわたり社会民主党と共にオーストリアの二大政党制を支えてきました。日本語では「オーストリア人民党」と訳されることもあります。国際民主同盟にも加盟しており、党のシンボルカラーはターコイズブルーです。

結党と戦後オーストリア

ÖVPは、1945年、戦前に存在したキリスト教社会党の後継として誕生しました。指導部は旧キリスト教社会党からの顔ぶれでしたが、社会民主党が戦前の党名復活を表明したのに対し、ÖVPは明確に旧党との連続性を強調しませんでした。カトリック教徒からの支持が厚く、伝統的な家族観、財産権、農民の利益などを重視する一方、幅広い社会福祉政策も支持していました。

大連立と「ハプスブルク危機」

戦後しばらくは社会民主党との大連立政権が続きました。しかし、世代交代とともに、両党内に単独政権を目指す勢力が台頭します。1960年代初頭、ハプスブルク家元皇太子オットーの帰国問題を巡り「ハプスブルク危機」と呼ばれる政治的対立が勃発。王党派を支持基盤の一部に持つÖVPはオットーの帰国を容認する姿勢を示した一方、社会民主党は反対し、大連立は崩壊しました。この後、ÖVPは戦後初めて単独政権を樹立します。

現代のÖVP

その後も社会民主党との大連立が繰り返されましたが、2000年代には極右政党である自由党との連立政権も経験しました。2008年には、社会民主党との連立政権が崩壊。国民議会選挙で低迷した結果、党首が交代する事態に陥りました。その後、社会民主党との連立政権を再び樹立しましたが、2017年の国民議会選挙では第一党となり、自由党との連立を選択しました。2019年の選挙では再び第一党となり、2020年には緑の党との連立政権を樹立しています。

ハプスブルク家との複雑な関係

ÖVPは君主主義政党ではありませんが、歴史的に王党派を支持基盤の一部として抱えており、ハプスブルク家に対し、一定の共感的な態度を示してきました。ハプスブルク家の帰国問題や、ハプスブルク法の撤廃問題など、ハプスブルク家関連の政治的事件において、ÖVPはハプスブルク家側に立つ姿勢を明確にしてきました。2019年現在でも、王党派政党であるシュヴァルツ＝ゲルベ・アリアンツとの繋がりを求める声は、ÖVP支持者の中にも存在します。

まとめ

オーストリア国民党は、戦後オーストリア政治の中心的な役割を担ってきた政党です。キリスト教民主主義と保守主義を基盤としつつ、時代に応じて社会民主党や自由党、緑の党など、様々な政党と連立政権を組んできました。ハプスブルク家との歴史的な関係も、ÖVPの複雑な政治的アイデンティティを理解する上で重要な要素となっています。今後のオーストリア政治においても、ÖVPは引き続き重要な役割を果たしていくと予想されます。

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