オーストリア空軍

オーストリア空軍の歴史

オーストリア空軍は、第二次世界大戦後の1955年にオーストリアが独立を回復し、中立政策を採用した際に再軍備の一環として設立されました。当初はソ連から供与された練習機でパイロット養成を開始し、その後、西側諸国との関係を深めながら、自国の防衛に必要な装備を導入してきました。

冷戦時代

冷戦時代、オーストリアは中立政策を維持するため、自国の防衛能力を強化する必要に迫られました。当初はイタリアのG.91の導入を検討しましたが、最終的にはスウェーデンのJ29F戦闘機を採用。その後も、次期戦闘機の選定を重ね、J35Dやサーブ 105XTなどの機種が候補に挙がりました。最終的にはサーブ 105XTを多数導入し、パイロット養成と空中監視任務を担わせることになりました。1980年代にはJ35Dを導入し、戦闘力を強化しましたが、オーストリア国家条約の規定により、ミサイルなどの誘導兵器の保有は禁止されていました。しかし、冷戦終結後の改正により、AIM-9ミサイルの運用能力が追加されました。

タイフーン導入騒動

2002年、オーストリア空軍はJ35Öの後継機として、ヨーロッパ4か国共同開発のタイフーンを選定しました。しかし、導入契約を巡り、詐欺疑惑が浮上。運用コストの高さも問題となり、一度は退役の方針が示されました。しかし、その後の方針転換により、タイフーンは空中監視任務を一手に担うことになりました。なお、タイフーンを巡る捜査は、証拠不十分として終了しています。

オーストリア空軍の組織

オーストリア空軍は、ザルツブルクの航空監視コマンドとフォーグラー空軍基地の航空支援コマンドで構成されています。航空監視コマンドは、戦闘航空団やレーダー大隊、防空大隊などを隷下に置き、領空監視や防空任務を担当。一方、航空支援コマンドは、輸送ヘリコプターや偵察機などを運用し、兵站輸送や災害派遣などの支援任務を担っています。

主要な組織

航空監視コマンド（KdoLRÜ）：
戦闘航空団（ヒンターストワッサー空軍基地）：タイフーン戦闘機を運用
レーダー大隊（RadB）：固定式および移動式レーダー監視所を運用
防空大隊（FlAB）：ミストラルやGDF-005などの対空兵器を運用
航空支援コマンド（KdoLUU）：
航空支援航空団（ブルモウスキー空軍基地）：輸送ヘリコプターや偵察機を運用
航空輸送飛行隊（LuTSta）：C-130K輸送機を運用
軽輸送ヘリコプター飛行隊（lTHSSta）：AB 212ヘリコプターを運用
連絡ヘリコプター飛行隊（VeHSSta）：SA 319ヘリコプターを運用

訓練体制

空軍に入隊した新兵は、ブルモウスキー空軍基地にある空軍学校（FlFlATS）で、パイロットからレーダー管制要員までのすべての職種について訓練を受けます。航空機訓練飛行隊ではPC-7、ヘリコプター訓練飛行隊ではSA 319が使用されます。

オーストリア空軍の装備

オーストリア空軍は、以下の主要な装備を保有しています。

固定翼機

タイフーン
PC-6/B2-H2
PC-7
C-130K

回転翼機

S-70A-42
OH-58B
AB 212
SA 319

対空兵器

ミストラル
GDF-005

搭載兵器

IRIS-T

オーストリア空軍は、中立政策を維持しつつ、領空防衛と国民保護のために活動しています。装備の近代化や訓練の強化を通じて、常に変化する安全保障環境に対応できるように努めています。

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