サーブ 105

サーブ 105：スウェーデン生まれの多用途ジェット練習機

サーブ 105（Saab 105）は、スウェーデンの航空機メーカー、サーブ社が開発したジェット練習機です。その汎用性の高さから、練習機としての用途に留まらず、軽攻撃機としても運用されてきました。

開発の経緯

1950年代、サーブ社はビジネスジェット機としても活用できる多用途小型ジェット機として、サーブ 105の自主開発に着手しました。1960年代に入ると、スウェーデン空軍がデ・ハビランド バンパイアの後継となる練習機を探していたところ、サーブ 105に注目。国産航空産業育成の観点から、サーブ 105をジェット練習機として採用することを決定しました。1961年12月に発注が行われ、試作機は1963年6月29日に初飛行に成功。SK60Aとして100機が製造されることとなりました。

設計の特徴

機体は、操縦席が左右に並んだ並列複座。エンジンは胴体脇に2基装備され、尾翼はT字型となっています。主翼は高翼配置で、後期型ではCOIN（Counter-Insurgency：対反乱作戦）機としても使用できるよう、主翼下にパイロンが設けられ、増槽や爆弾を搭載可能となっています。

初期型は、ボルボ・フリューグモートルがライセンス生産したチュルボメカ オービスク低バイパス比ターボジェットエンジン（RM 9）を2基搭載していました。アップデートモデルでは、ウィリアムズ FJ44（RM 15）に換装されています。

運用

SK60Aは、非武装の練習機として1966年からスウェーデン空軍に配備されました。1970年代に入ると、一部機体は軽攻撃機としても使用できるSK60BおよびSK60Cに改装されました。スウェーデン空軍向けには合計150機が生産され、アクロバットチーム「チーム60」でも使用されています。

サーブ社はエンジンを強化したサーブ 105XTを開発。これを基にしたサーブ 105Öが、オーストリア空軍でデ・ハビランド バンパイアとサーブ 29 トゥンナンの後継機として採用されました。1970年7月に最初の機体が引き渡され、1972年までに40機が製造されました。2019年時点でも運用コストの低さから12機が運用されていましたが、2020年7月6日に退役しました。

派生型

サーブ 105には、用途や仕様に応じて様々な派生型が存在します。

SK 60A：初期生産型。スウェーデン空軍向けに149機が製造されました。
SK 60B：SK 60Aを改修した軽攻撃機型。照準器を搭載しています。
SK 60C：対地攻撃・偵察機型。機首を延長し、偵察用カメラを搭載しています。
SK 60D：ビジネスジェット構想を元に生まれた連絡輸送機。座席は換装可能で、乗員4名がパラシュートを装備する必要があります。
SK 60E：SK 60Aを改修した4座仕様機。民間機仕様の内装と計器着陸装置を採用しています。
SK 60W：1993年に提案された近代化改修型。エンジンを換装し、デジタルエンジン制御ユニットを搭載しています。
Saab 105Ö：サーブ 105XTを元に、オーストリア空軍向けに製造された輸出機。一部は座席を換装可能なVIP仕様に改修されました。

このほか、試作機や輸出向けに提案されたものの、実現しなかった派生型も存在します。

性能諸元（SK 60A）

全長：10.50 m
全幅：9.05 m
全高：2.70 m
翼面積：16.30 m2
エンジン：チュルボメカ オービスク（推力743kg）×2基
最大速度：770 km/h
実用上昇限度：13,200 m
航続距離：1,400 km
乗員：2名

性能諸元（サーブ 105Ö）

乗員: 2名（生徒と教官。輸送機仕様時は+2名）
全長: 10.8 m
全高: 2.7 m
翼幅: 9.5 m
翼面積: 16.3 m2
空虚重量: 2,849 kg
最大離陸重量: 4,635 kg
動力: GE社製J-85-17B ターボジェット × 2
最大速度: 970 km/h
航続距離: 2,300 km
* 実用上昇限度: 13.100 m

サーブ 105は、その汎用性と経済性から、多くの国で長年にわたり運用されてきた傑作ジェット機と言えるでしょう。

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