オーバーハイム

オーバーハイム・エレクトロニクス：シンセサイザーの歴史を彩った革新的なメーカー

オーバーハイム・エレクトロニクス（Oberheim Electronics）は、1973年にトーマス・エルロイ・オーバーハイムによって設立された、アメリカの楽器メーカーです。主にシンセサイザーの開発・製造を手掛け、その革新的な製品は、多くのミュージシャンに影響を与えました。1986年にギブソンの傘下に入り、その後、商標はバイカウント・インターナショナル（Viscount International）にライセンスされています。

歴史

オーバーハイムの最初の製品は、デジタルシーケンサーのDS-2（1974年発売）でした。当時、モーグやアープといったメーカーのシンセサイザーをコントロールするために開発されたもので、これを発展させ、DS-2で制御可能な独自の音源モジュールSEMを開発します。このSEMこそが、オーバーハイムのシンセサイザーの個性を決定づける重要な要素となりました。

当時のモーグやアープのシンセサイザーのVCF（電圧制御フィルター）は、24dB/octという急峻な変化量を持っていましたが、SEMのVCFは12dB/octという比較的緩やかな変化量でした。この特性により、オーバーハイムのシンセサイザーは、より自然で暖かみのあるサウンドを実現し、他社の製品との差別化に成功しました。

当初、SEMは単体のモジュールであり、鍵盤は搭載されていませんでした。しかし、1975年には、SEMを4台内蔵したポリフォニック・シンセサイザー「4-Voice」と、SEMを2台内蔵した「2-Voice」を発売。これにより、オーバーハイムは鍵盤付きシンセサイザー市場に参入し、その地位を確立していきます。

その後も、OB-XやMatrix-12など、数々のヒット製品をリリースしましたが、次第に資金繰りが悪化。最終的には、顧問弁護士に会社を乗っ取られるという形で、創業者であるトーマス・エルロイ・オーバーハイムは会社を去ることになります。1986年にはギブソンの傘下に入りました。

ギブソン傘下に入った後も、「オーバーハイム」のブランドは存続し、いくつかの新製品が発表されています。

主な製品

DS-2 (1974年)：デジタルシーケンサー。モーグやアープのシンセサイザーをコントロールするために使用。
SEM (1974年)：シンセサイザーモジュール。オーバーハイムのシンセサイザーのサウンドを特徴づける重要な要素。
4-Voice (1975年)：SEMを4台内蔵したポリフォニック・シンセサイザー。
2-Voice (1975年)：SEMを2台内蔵したポリフォニック・シンセサイザー。
8-Voice (1977年)：SEMを8台内蔵したポリフォニック・シンセサイザー。坂本龍一がアルバム「千のナイフ」で使用し、矢野顕子がイエロー・マジック・オーケストラのライブでサポートキーボーディストとして使用したことでも知られています。
OB-1 (1978年)
OB-SX (1978年)
Mini Sequencer (1979年)
OB-X (1979年)
DMX (1980年)
DSX (1981年)
OB-Xa (1981年)：ヴァン・ヘイレンがヒット曲「ジャンプ」で使用したことで有名。
DX (1982年)
OB-8 (1983年)
Matrix-12 (1985年)
Xpander (1984年)
Prommer (1984年)
Matrix-6 (1985年)
DPX1 (1987年)
Matrix-1000 (1987年)
OB-Xk (1989年)
Echoplex Digital Pro (1994年)
OB-Mx (1994年)：ギブソンとドン・ブックラのコラボレーションによる製品。最後期のアナログシンセサイザーの一つ。
OB-12 (2000年)：バイカウント・インターナショナルの製品。

オーバーハイム・エレクトロニクスは、その革新的な技術と個性的なサウンドで、シンセサイザーの歴史に大きな足跡を残しました。現在でも、そのサウンドは多くのミュージシャンに愛され続けています。

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