オールド (映画)

オールド (Old)

2021年に公開されたアメリカ合衆国のホラー・ミステリー・スリラー映画。監督・製作・脚本をM・ナイト・シャマランが務めました。フレデリック・ペータースとピエール・オスカル・レヴィーによるグラフィックノベル『Sandcastle』に着想を得ていますが、その内容は映画独自のものとして描かれています。ガエル・ガルシア・ベルナル、ヴィッキー・クリープス、ルーファス・シーウェルらが出演しています。

物語は、人里離れた美しい砂浜を訪れた休暇中の家族を中心に展開します。彼らはその場所で、自分たちの身体が信じられない速さで老化し始め、わずか一日で一生を終えてしまうという異常な現象に気づきます。脱出を試みるものの、ビーチの外へ出ようとすると激しい頭痛に襲われ意識を失ってしまうため、囚われた状態となります。

あらすじ

離婚を控えたガイとプリスカの夫婦は、息子トレントと娘マドックスを連れて南国リゾートでの最後の家族旅行に訪れます。ホテルで他の宿泊客と交流する中、マネージャーから特別なプライベートビーチを勧められ、翌日そこへ向かいます。ビーチには、他に招待された三組の家族や個人客が集まっていました。美しい景色の中で束の間の休息を楽しむ彼らでしたが、浜辺に女性の遺体が打ち上げられたことから事態は急変します。その遺体はわずか数時間で白骨化し、子供たちが急速に成長を始めるなど、不可解な現象が次々と発生します。

このビーチでは時間が異常な速度で流れており、24時間で50年分の時間が経過することが判明します。参加者の多くが何らかの基礎疾患を抱えていることも明らかになります。限られた時間の中、混乱と絶望に苛まれながらも、彼らは脱出の糸口を探ります。子供たちの恋愛、出産、そして悲劇的な死。大人たちもまた、病気や狂気、そして時間の影響によって次々と命を落としていきます。

生き残ったトレントとマドックスは、この場所で命を落とした犠牲者が残したノートから、地磁気と周囲の岩石が老化を早めている可能性、そして金属がこの作用を遮断するヒントを得ます。また、監視者の存在にも気づきます。両親の死を看取った後、トレントはホテルのマネージャーの甥イドリブから受け取っていた暗号文を解読し、「珊瑚」が鍵となる可能性に思い至ります。彼らは珊瑚礁のトンネルを潜り抜け、ビーチからの脱出に成功します。

ホテルに戻った二人は、宿泊していた警察官にノートを渡し、これまでの出来事を説明します。実はこのリゾートホテルは、大手製薬会社が運営する極秘研究所であり、基礎疾患を持つ人々を欺いて新薬の治験を行っていたのです。ウェルカムドリンクに混ぜた新薬を飲ませ、時間加速ビーチで効果を観察していたという恐ろしい真実が明らかになります。トレントとマドックスの通報により、ホテルの関係者や製薬会社は逮捕され、事件は公になります。

製作と背景

M・ナイト・シャマランは、娘たちからの父の日の贈り物であるグラフィックノベル『Sandcastle』に感銘を受け、本作の製作を構想しました。ユニバーサル・ピクチャーズとの複数作品契約の一環として企画が進められ、2020年9月からドミニカ共和国で主要撮影が開始されました。これはシャマラン監督にとって、幼少期を過ごしたフィラデルフィア以外で初めて行われた撮影です。

1800万ドルの製作費が投じられ、撮影監督マイク・ジオラキスと共に35ミリフィルムが使用されました。コロナ禍という困難な状況下での撮影でしたが、厳格な対策が講じられ、陽性者を一人も出すことなく完了しました。撮影にあたっては、『美しき冒険旅行』や『ピクニックatハンギング・ロック』といったオーストラリアン・ニューウェーブ作品のほか、『皆殺しの天使』『羅生門』『乱』など、国内外の様々な作品から影響を受けています。特に、閉塞感や緊張感を表現するために工夫が凝らされた撮影技法が見られます。娘のイシャナ・シャマランが第二班監督として自然の撮影を担当し、もう一人の娘サレカ・シャマランはオリジナル楽曲を提供しています。

音楽

映画音楽はトレヴァー・ガレキスが手掛けました。娘のサレカ・シャマランによるオリジナル曲「Remain」は、U2の「With or Without You」にインスパイアされています。

テーマ

シャマラン監督自身は、本作で「時間との関係、私たちが抱える時間に対する機能不全」を掘り下げたと語っています。パンデミックを経て、時間に対する人々の意識が変化したこととも関連付けて語られることがあります。出演者たちも、「老いることについての寓話」、「自然を当たり前と思わない」、「愛と家族の力」など、それぞれの視点から作品のテーマについて言及しています。

評価

本作に対する批評家の評価は賛否両論に分かれました。Rotten Tomatoesでは50%の支持率、Metacriticでは55/100という評価を得ています。脚本や台詞、一部の演技に対しては批判的な意見が見られましたが、ユニークなコンセプトや美しい撮影風景、閉塞感を巧みに表現した演出技法は好意的に評価されました。特に、どんでん返しの結末については意見が分かれる結果となりました。

興行収入としては、全世界で約9000万ドルを記録しました。公開週末の成績はシャマラン監督作としては控えめなものでしたが、コロナ禍や競合作品の影響、「スクリーン疲労」といった様々な要因が指摘されています。

短時間で一生を駆け抜けるという強烈な設定と、シャマラン監督らしい不条理な展開が観る者に強い印象を残す作品です。

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